三井物産、資源ブーム終焉でも好調の理由 自社株買いをきっかけに株価は1割強の値上がり
しかし現時点では、それは杞憂となっている。2013年4~12月期(第3四半期)の純利益は前年同期比18.9%増の3019億円。このペースでいけば、同社が公表する通期純利益3700億円(前期比20.2%増)という予想数値は上振れる公算が大きい。懸案の資源・エネルギー部門も増益基調にある。資源依存度の高い三井物産が、なぜ好業績を維持できているのか。
理由の1つは、資源部門の事業構成だ。同社の保有権益は鉄鉱石と石油・ガス関連が中心だが、これらの商品は値下がり幅が比較的小さい。3年前のピーク時からの下落幅は、それぞれ2割強、1割強にとどまっている。他方、石炭(一般炭)については、3年前のピーク時から4割も下がっている。三井物産は、三菱商事や伊藤忠商事に比べると、石炭の保有権益量が大きくない。この事業構成が幸いしている。
慎重な資源投資戦略をとってきたこともプラスに働いている。「ここ2~3年の資源投資といえば、手堅い既存権益の拡張が中心。新しい権益への投資は高値づかみのリスクもあり、抑制していた」(野瀬部長)。逆に、リスクを積極的に取った結果、苦境にあえいでいるのが、BHPビリトン、リオ・ティントなど欧米の資源メジャーである。中国需要を当て込んで、新規鉱山開発や業容の多角化を加速。コストを膨らませた結果、各社は最終赤字を余儀なくされている。
継続的な自己株買いに意欲
底堅い資源部門の一方で、これまで目立たなかった非資源事業も着実に業績を伸ばしている。特に好調なのが、海外で展開する発電(IPP)事業だ。13年4~12月の9カ月だけで、前年同期比103億円(3.4倍)の増益要因となっている。
「数年前からいろいろ仕込んできた案件が開花している」と野瀬部長が語るように、インドネシアや中国に建設した石炭火力発電所が今年度から新たに収益貢献している。保有する発電権益のうち、75%は長期売電契約が付いた案件。資産が積み増されると、それだけ収益も上積みできる手堅いビジネスだ。
また、従来型のビジネスである鋼管や化学品のトレーディングも、世界的な資源開発需要や自動車生産台数の高まりを追い風に好調に推移している。
岡田譲治CFO(最高財務責任者)は「自己株買いを継続的に検討していきたい」と、今回だけで終わらないことを強調する。それはとりもなおさず、三井物産が資源市況悪化にのまれず、今後も成長を持続させることへの自信の表れでもある。
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