動き始めた「サハリンからパイプライン」構想 国富流出阻止が喫緊の課題
サハリンからロシアの天然ガスをパイプラインで日本へ輸送するというプロジェクトが具現化しつつある。2006年頃に一度浮上しながら、CO2削減から原発シフトの流れの中で立ち消えになっていたものが、再び日の目を見るチャンスがめぐってきたのだ。
背景にあるのが、ここ数年、拡大の一途をたどってきた日本の貿易赤字だ。東日本大震災直後の2011年度には2.24兆円、原発が大飯のみ稼働していた2012年度で5.2兆円だった。そして5月12日に財務省が公表した2013年度の国際収支状況(速報)によれば、貿易収支はマイナス10兆8642億円と、ついに赤字が10兆円を上回った。
原油とLNGで3.4兆円の赤字拡大
主な赤字増の要因は、原油2兆2994億円(前期比18.4%増)と液化天然ガス(LNG)の1兆1287億円(同18.2%増)。主要エネルギー資源2種で3.4兆円もの貿易赤字拡大を招いたことになる。LNGの輸入金額を見ても、2010年度の3.4兆円から2013年度には7兆円に倍増した。
ところが、世界の天然ガス価格は、カタールの増産と米国のシェール革命によって大幅に低下している。シェール革命に沸く米国では、100万BTU 当たりの価格は2008年の8.86ドルから2012年の2.75ドルを底に、5ドル程度の間をさまよっている。欧州でも、ここ数年は8~12ドル弱の間に収まっている。
日本もかつては、ほぼ欧州と類似の価格で推移してきた。ところが、震災以降、2011年は15.55ドル、2012年18.05ドル、2013年は17.34ドルという、米国の5倍、欧州の倍の値段を払っている。原発停止とCO2問題でLNG依存度を高めている日本は、足元を見られたのだ。そこに円安も加わって、莫大な国富が歯止めもなく垂れ流し続けられている。
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