あなたは大丈夫? 「セックスレス大国」日本 「性の不満足」は夫婦関係のリスク要因

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セックスレスといっても、どこから先がセックスレスと呼べるかが人によって違う可能性があるので、この調査では、20~40代で、配偶者か恋人がいて、セックスの回数が月1回未満をセックスレスと定義し、分析しています。

それによれば、30代のセックスレスの比率が19%で、40代(16%)よりも高くなっています。Durex社の調査で、週1回以上が27%にすぎないことと矛盾するように見えるかもしれませんが、Durex社の調査は18歳以上全体を対象としているのに対し、このNHKの調査はパートナーがいる人に限定しています。

実は私は15年ほど前、この調査を基にしたNHKのシリーズ番組に、ちょうどセックスレスの回の解説で出演したことがあります。そのときも述べたのですが、30代のセックスレスの比率が40代より高くなるのは、ある意味で理解可能です。子育てで手いっぱいだったり、仕事が非常に忙しい人が多かったり、「それどころじゃない」と感じる人が多いのでしょう。川の字に寝る住宅事情も一因かもしれません。

だとすれば、ある程度はやむをえないとも言えるでしょう。ただ、2割もの30代がセックスレスで、かつそれに満足しているわけでもないとすると、やはり問題をはらんでいると言わざるをえません。

セックスレスは夫婦関係のリスク要因

セックスレスの女性は、「パートナーとのセックスに不満」と考える比率が43%と突出して高く、セックスレスの男性の21%を大きく上回ります。非セックスレス層では、男女ともほぼ9割が満足と答えているのとは対照的です。

セックスレス層で女性側の不満が男性側の倍もあるのは、女性側が男性側に何が不満かを伝えられないからです。Durex社の調査にあった、「オープンな考え」を持つ人が少ないことから生じる問題です。

また、ックスレスのカップルでは、性に関する話題が「まったくない・めったにない」比率が77%。非セックスレス層の43%を大きく上回ります。つまり、問題を解消する回路さえ存在していないということになります。

性行為は、当然、とても密なコミュニケーションです。セックスレスの場合、その回路が閉ざされているわけで、それを補うには、会話や、共に過ごす時間といった代わりになるものが必要となるはずです。

番組でも強調したのですが、子どもが小さくてそれどころではない、忙しくて時間がないといった場合でも、せめて会話の時間を持つようにする、ハグやキスを絶やさないようにするといった工夫がないと、関係は冷え続けていきます。

そして、それが何年か続くと、もっと触れ合いたいと思っても「いまさらムリ」といった返答が返ってくることが少なくありません。この話題が決して「下ネタ」ではないこと、わかっていただけたでしょうか。放置をすると、取り返しがつかなくなるかもしれません。あなたは大丈夫ですか?

え? その前に相手がいない? だとすると、こんな文章を読んでる場合じゃありません。「書を捨てよ、町へ出よう」ですねぇ……。

瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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