中野 その一方で百貨店の高額品売り上げは順調です。
藤野 まさに二極化ですね。
渋澤 でも、消費税率の引き上げをせずに先延ばしすることと、消費税率を予定通り引き上げるのと、どちらのリスクが高いのかを考えてみると、僕は前者の方がはるかにリスキーだと思います。
もし5兆円の税収見込みが崩れたら
確かに、消費税率を引き上げれば、個人消費は短期的に落ち込むでしょう。でも、それは分かっていることですし、十分に織り込める話です。でも、消費税率を引き上げなかった場合のリスクは、まったく読めません。
何しろ、国際公約していることを放棄するわけですから、何が起こるのか、まったく見えない。しかも、日本の国債市場は今、機能がほぼ失われた状態にあります。市場に出てきた売り物のほとんどを、日銀が買い上げている状態ですから、値動きもなければ、売買の流動性も枯れている。
このような状況で、消費税率引き上げによる約5兆円の税収見込みが崩れた時、何が起こるのか。この新しい情報を、今の国債市場では織り込むことができず、大混乱に陥るかも知れません。それは、なかなか国民の目には見えないことですが、実際に国債市場が大混乱に陥ったら、いずれさまざまな形で国民生活に影響を及ぼすことになります。だから、消費税率の引き上げを延期することに対して、僕自身は反対なのです。
中野 確かに、今の渋澤さんの意見には理があります。世界に対して「消費税を10%まで引き上げます」って宣言しちゃいましたからね。
藤野 まあ、やるとしたら1年の延期でしょうか。
渋澤 それでも混乱すると思いますよ。
中野 消費税率を10%に引き上げないという選択肢はないわけですから、延期するか、もしくは予定通りに実施するかのいずれかしかないですね。消費税率の引き上げは国際公約ですから、やらざるを得ないでしょう。恐らく一時的かも知れませんが、消費税率の引き上げによって、景気は落ち込むと思います。
そこは、黒田バズーカと補正予算によってカバーするというのが、今の政府の考え方なのではないでしょうか。消費税率を8%から10%に引き上げることによって入ってくる増税分が約5兆円ですから、それに匹敵する程度の補正を組み、加えて黒田バズーカ第2弾として、さらなる量的緩和政策を実施した、いうシナリオでしょうね。
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