「世界一」の可能性は30%、いいなら実行[下] 柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長に聞く
20年5兆円の売り上げ目標はどうやってはじき出したか。「今、彼らは1兆4000億円前後。10年後、2兆~3兆円になっている。追い抜くには、5兆円はいるな、と。それぐらいいい加減なんですよ。それぐらい単純じゃないと、誰もわからない」。世界一への本気度が、だ。
「感電死していたかもしれない」
ファーストリテイリング監査役の安本隆晴は上場指南を依頼されて以来、柳井と20年の付き合いになる。
これじゃ、上場できないな。そう思ったことが3度ある。3000万円が用意できず、あわや不渡り、の場面もあった。そのユニクロがここまで来た。「柳井の迫力、肝っ玉がどーんと伝わってくる。僕の接触頻度は1~2週間に1度ぐらい。経理部長をやって(毎日接して)いたら、感電死していたかもしれない」。
感電の被害者は山といる。柳井自身、「(後継者作りで)2回失敗した」と言う。1回目は澤田・玉塚のチーム経営。2回目は、大企業の常務、専務、副社長をスカウトし、執行役員に据えたが、惨敗。おみこし人間では、電圧に耐えられない。
だが、後継者が育たなければ、世界一どころか、「引退計画」も絵に描いた餅になる。柳井は「創業者である以上、一生、完全な引退はできない」と覚悟している。が、65歳には日々の業務執行(社長職)は返上したい。会長として週3日、午前中だけ出社する。水曜日もゴルフのクラブを握りたい。柳井にとってゴルフはほとんど唯一の趣味である。
ゴルフ仲間の小川が言う。「正々堂々のゴルフ。手を抜かない。愚痴らない。勝ってニコニコ。負けたら悔しがる」。コースを読み、計画を立て、打って計画修正。仕事のサイクルそのものだが、そこには、素直に感情を解き放つ柳井がいる。
本来の仕事は、そうは行かない。
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