「世界一」の可能性は30%、いいなら実行[下] 柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長に聞く

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柳井は『わがドラッカー流経営論』を上梓するほど、ドラッカーに傾倒している。「いつも、もやもや考えている。どうしたら、本質的にいい会社を作れるのか。どうしたら、人はモラール・アップするか。ドラッカーを読むと、あ、僕が考えていたのは、こういうことなんだ、と」。

ドラッカーは本質を書く。それが可能なのは、自著『傍観者の時代』にあるように、「傍観者」だったから。オーストリア帝国の崩壊、大恐慌、共産主義、ファシズムの台頭という大激動の中で醒めていた。あえて距離を置くから、見えてくる。

柳井も熱くならない。つねに、クールに状況を客観化する自分がいる。生まれついての性分もあるが、このスタンスは読書で鍛えられた。

ちょっと前まで、新幹線で眠りこけるサラリーマンを見ると思った。「こいつら、何で寝るのか。もったいない」。暇があれば読書。読むのは主に、経営者が書いた本だ。「この経営者は本当は、何を考えているのか。彼はこうしたが、自分ならどうするか」。著者と対話することによって、相手も自分も客観化する。より本質的に考える癖がついた。

だから、同じスタンスのドラッカーがストンと落ちる。とりわけ『イノベーションと起業家精神』に教えられた。ドラッカーは書く。「霊感や天才によるイノベーションは、二度と行うことはできない。目的意識、分析、体系によるイノベーションだけが、論ずるに値する」。柳井のイノベーションが正しくそうだった。

感電被害者の山 どうする後継者

00年4月、柳井は全役員を引き連れ東レに乗り込んだ。ユニクロ側はノー・ネクタイ。東レ側は会長(当時)の前田勝之助以下、全員が紺のスーツ。柳井の提案は二つ。一つ、ユニクロ専門の部署を作ってください。二つ、その部署のトップは社長に就任していただきたい。勢いがあるとは言え、ユニクロと名門東レでは格が違う。が、臆するところのない柳井に、かえって前田が感動した。

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