「世界一」の可能性は30%、いいなら実行[下] 柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長に聞く

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商品でもマーケティングでも、重要事項は細目に至るまで全部目を通す。「これ、違う。変えてくれ」。柳井は「経営は砂上の楼閣」と思っている。「一瞬でも気を抜いたら、そのとき、全部が崩れる」。

「オレがオレが」と突出する人間も許さない。「一定の部分で優れているからといって、全部を自分勝手にする。そんなこと許されない。能力があっても、自己主張だけでチームプレーができない人はいらないですよ。いらないよ、そんな社員」。

しかし、感情的な好悪で差別することはいっさいない。だから、感電被害者も後腐れない。人材会社スピリッツ社長の竹内薫は18年間、ユニクロの採用政策にかかわり、「ユニクロOB会」を主宰している。「年1回、100人集まって3時間のどんちゃん騒ぎ。『当時は頭に来たが、あれが自分の原点』と、みんなが言う」。副社長だった澤田も、定期便のように、柳井の許に顔を出す。

後継者を育てる最良の手段は「任せる」こと

とは言え、世間は柳井を「超カリスマ経営者」視し、柳井自身、全権を再掌握した05年以降の成果に自信を深めている。社員にとって社長との距離感は広がる一方だろう。今春、幹部養成機関としてFRMIC(ファーストリテイリング・マネジメント&イノベーション・センター)が開校した。GEのクロトンビルに範を取り、全社から選抜した200人を鍛え上げる。しかし、古来、後継者を育てる最良の手段は坐学ではない。「任せる」ことだ。

10年前のインタビューで、柳井は「先生」を3人挙げた。松下幸之助、本田宗一郎、父親である。

幸之助は一事業部長の山下俊彦に全権を委ねた。宗一郎は片腕の副社長・藤沢武夫とともに一線を引き、キレイさっぱり若手に後を託した。

そして父親。父の洋服屋を継いで間もなく、大半の店員に愛想を尽かされ、逃げられた柳井に、父は会社の通帳と実印を手渡した。そこから経営者・柳井の歩みが始まった。

父の葬儀で「人生最大のライバルでした」と涙であいさつした。世界チャンピオン有資格者は、ライバルを越えられるか。最終ラウンドのゴングが鳴り響いている。=敬称略=

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2010年10月9日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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