東京・港区では大型マンションの建設ラッシュで待機児童が近年増加。2013年には195人に達した。柳澤さんを始め、女性議員たちが議会で声を上げ続け、区も過去最大の保育定員拡大へと予算を投じ、翌年4月には47人に減少した。「声を大きくしていけば行政は動かざるを得ない」と柳澤さん。ともすれば年配世代が主導権を取りがちな地方政治にあって、現役で子育て中の女性議員が区民の声を届けた好例だ。
一方、上の世代はどうか。村上さんは普段着でスーパーで買い物をしていて有権者に驚かれることもあるが、「ネギやお肉の値段が上がった、下がったということや、消費税の影響で生活がどうなのか肌で感じられる」。“主婦目線”が福祉や地域経済振興等、生活者視点での政策づくりにつながる。
「性」への意識の低さ~LGBTの視点から
しかし女性の政治参画を進めるにも、政治・行政の現場意識はまだまだ低い。
ヤジ問題の後に新聞や雑誌が女性議員のアンケートを行い、「体を触られる」等のセクハラ告発が相次いだ。都議会のヤジ問題について、豊島区議の石川大我さん(社民党)は、「昔からあったことだが、(被害者側の)党や議員が若かったことでおかしいことはおかしいと言えた」と問題の根深さを指摘する。
セクハラは女性に対してだけではない。石川さんは同僚議員と地方視察に行った際、宿泊先が相部屋ではなく個室だと一同に知らされた際、耳を疑う発言を聞いた。「俺の身の安全が確保された」――。石川さんが同性愛者であることを公言し、LGBT(性的少数派)の地位向上、権利拡大を主張していることを揶揄するような発言だ。「その議員は『ゲイは男を襲う』という短絡的な考え方だったのだろう」と半ば落胆気味に振り返る。10月下旬にはまたもセクハラ発言があった。石川さんを含む男性2人と女性4人が所属する会派構成にあって、もう一人の男性区議が「会派で実質的な男性は私だけ」と発言したのに抗議した。
しかし石川さんが議員になってから行政側の意識は変わりはじめた。スポーツ施設建設が議題に上がった際には、性同一性障害者の更衣室利用についての想定問答を用意。豊島区の自殺予防対応マニュアルにもLGBTの項目が盛り込まれた。
政治と性~問われる有権者の意識
女性議員を増やすため、一定数を割り当てる「クオータ」制が、世界90か国近くで法的または政党の取り組みで導入されているが、日本ではまずは男女の役割や差を政治がどう向き合い、互いの良さを引き出しあうか、政治家も有権者も議論を深め、社会的合意を確立することが優先だろう。ただ、「性」を巡る現実は多様で複雑だ。昨今の女性登用はキャリアウーマンの話が目立つが、村上さんは保守の立場らしく、「女性が輝く社会づくりは、家庭で子育てや介護に取り組む女性にも光を当てるべき」と語る。
石川さんは小学校の入学式に議員挨拶で訪れた際、教職員に「お子さんは何年生ですか?」といきなり尋ねられた。彼は未婚だ。同性愛者にとって異性愛を前提とした話は「セクハラ」だろうが、仮に異性愛の独身男性に対しての質問だったとしても配慮不足に受け取る人もいるはず。政治と性を考える時、私たち有権者の意識も問われているのである。
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