当の本人は《専門性を磨く姿勢が高く評価されているに違いない》と思っているようですが、
《自己能力の向上に投資していない》
《仕事上の専門性を持っていない》
と、職場の上司や先輩から必ずしも評価されていないことも多々あるようです。
あるメーカーの管理部門に勤務しているDさん(26歳)は、仕事が終わった後に自費で専門学校に通い、社会保険労務士、衛生管理者、行政書士の取得を目指し日夜勉強中。当然ながら管理部門の一員としての専門性は上がっているはずなのに、
「D君が管理部門に異動してから1年が経つが、仕事上の成長が見受けられない」
と厳しい評価が上司から下されていました。このギャップはどうして生まれてしまったのでしょうか?
なぜ専門職が機能しにくい?
ここで別の観点から、今回のテーマ=専門性について考えてみたいと思います。これまで多くの日本企業では、会社側が個々の社員にさまざまな部門を経験させて
《ジェネラリスト(=広範囲にわたる知識を持つ人)》
を育てることが重要視され、そのため専門性のある人材が育たない、と言われてきました。そこで近年、専門性を高めるために「複線型人事制度」で専門職の活躍を促すことが注目され、一時期、多くの大企業で導入が続々と行われました。
当方が勤務していたリクルート社でも、課長なのに部下を持たないプレイング課長と呼ばれる役職が登場したとき、「これまでになかった働き方が実現するかも」と、期待する意見も多くあったと記憶しています。
ところが、ふたを開けてみると、“専門職”として処遇された人々の専門性が「???」であったため、うまく機能しなかったケースがたくさんありました。
その理由は社員として専門性を究める限界が、社員と会社側の双方にあったからでした。たとえば、ある専門商社の場合。社員の専門性を生かすために専門職制度を導入。管理部門の管理職の約半数が
《ジェネラリストではなくスペシャリストを目指してほしい》
との社長からのメッセージを受け、《専門課長》という部下を持たない専門職に。当初は専門課長として知識を磨く中で、弁護士や中小企業診断士が誕生し、社内の知識レベルに変化をもたらすと期待されていました。ところが、知識習得面で意欲の高い専門課長は知識を磨くうちに
「だったら、弁護士になったほうがいい」
と考えて退職していきました。気がつくと、専門課長に残っているのは専門性を究める意欲が低い、
《ただ同じ部署に長くいるだけのベテラン社員》
ばかりとなってしまいました。
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