専門性を磨いても、職場では活躍できない? 若手社員の「お勉強」ブームを見て考える

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ちなみに残った専門職社員たちの声を聞くと

「本当は部下のいる課長のままでいたかった。専門職と言われても、どのように専門性を究めていいのか、会社は教えてくれない。だから、意欲が下がった状態になってしまった」

と本音を語ってくれました。どうやら、部下をマネジメントする課長職を減らして、そのポストを奪われた人に対する救済策としての専門職であるというのが実情で、それ以上には目的が明確でなかったようです。

それならば、専門職制度の社員たちの中から、意欲的な人が逃げていくのも仕方ありません。結局、その会社では専門職制度を廃止したそうです。

専門性だけではダメという真実

さて、冒頭に登場した専門性に関する若手社員と上司間のギャップの問題と、専門職制度が機能しないという問題が起きたことの背景には、同じ原因があるように思います。それは専門性だけに目を奪われ、会社でそれを真に生かすために必要なベースのスキル、つまりヒューマンスキルを置き去りにしていたのではないかということです。

ヒューマンスキルは他者との良好な人間関係を構築し、維持するために必要な能力のこと。対人関係能力とも言われ、業種・職種に関係なく、ビジネスパーソンなら誰でも求められる基本的な能力です。さらに単なるコミュニケーションではなく、「目的に向かって」チーム内で相互に作用していくため

・推進力
・説明力
・交渉力
・調整力

などのスキルも指します。こうしたスキルは、専門職の人にも当然必要なものです。さらに言えば、部下でない人々と仕事でかかわり、業務を遂行するためには、より高度なヒューマンスキルが必要とも言えます。たとえば、

・専門性のある問題を、専門外の人に理解・納得させる調整力
・専門性の高いチームで業務を遂行できるプロジェクト推進力

このような能力があってはじめて、専門性は仕事で生かされるものです。

資格を取得すること、専門性を高めるための勉強が無意味とは言いません。ただ、ベーススキル(ヒューマンスキル)の重要性を認識して、磨く努力も同時に行っていただきたいもの。それができれば、上司の評価は大いに変わり、専門職制度も機能するに違いありません。

最後に、こう考えると、本当に仕事で活躍するためには、限られた役割だけをこなすという意識の専門職では十分でなく、より広い役割をこなすジェネラリストに近づいていく気がしてなりません。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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