専門性を磨いても、職場では活躍できない?

若手社員の「お勉強」ブームを見て考える

ちなみに残った専門職社員たちの声を聞くと

「本当は部下のいる課長のままでいたかった。専門職と言われても、どのように専門性を究めていいのか、会社は教えてくれない。だから、意欲が下がった状態になってしまった」

と本音を語ってくれました。どうやら、部下をマネジメントする課長職を減らして、そのポストを奪われた人に対する救済策としての専門職であるというのが実情で、それ以上には目的が明確でなかったようです。

それならば、専門職制度の社員たちの中から、意欲的な人が逃げていくのも仕方ありません。結局、その会社では専門職制度を廃止したそうです。

専門性だけではダメという真実

さて、冒頭に登場した専門性に関する若手社員と上司間のギャップの問題と、専門職制度が機能しないという問題が起きたことの背景には、同じ原因があるように思います。それは専門性だけに目を奪われ、会社でそれを真に生かすために必要なベースのスキル、つまりヒューマンスキルを置き去りにしていたのではないかということです。

ヒューマンスキルは他者との良好な人間関係を構築し、維持するために必要な能力のこと。対人関係能力とも言われ、業種・職種に関係なく、ビジネスパーソンなら誰でも求められる基本的な能力です。さらに単なるコミュニケーションではなく、「目的に向かって」チーム内で相互に作用していくため

・推進力
・説明力
・交渉力
・調整力

などのスキルも指します。こうしたスキルは、専門職の人にも当然必要なものです。さらに言えば、部下でない人々と仕事でかかわり、業務を遂行するためには、より高度なヒューマンスキルが必要とも言えます。たとえば、

・専門性のある問題を、専門外の人に理解・納得させる調整力
・専門性の高いチームで業務を遂行できるプロジェクト推進力

このような能力があってはじめて、専門性は仕事で生かされるものです。

資格を取得すること、専門性を高めるための勉強が無意味とは言いません。ただ、ベーススキル(ヒューマンスキル)の重要性を認識して、磨く努力も同時に行っていただきたいもの。それができれば、上司の評価は大いに変わり、専門職制度も機能するに違いありません。

最後に、こう考えると、本当に仕事で活躍するためには、限られた役割だけをこなすという意識の専門職では十分でなく、より広い役割をこなすジェネラリストに近づいていく気がしてなりません。

キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
  • インフレが日本を救う
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
トレンドライブラリーAD
人気の動画
パチンコホール「ガイア」店舗撤退で大激変する勢力図
パチンコホール「ガイア」店舗撤退で大激変する勢力図
地方スーパーが撃沈「コスモス薬品」の破壊力
地方スーパーが撃沈「コスモス薬品」の破壊力
ネットで生卵がメチャメチャ売れる驚きの理由
ネットで生卵がメチャメチャ売れる驚きの理由
やる気を削がれる人と奮起する人の決定的な差
やる気を削がれる人と奮起する人の決定的な差
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
サプライズと配当成長株で勝つ<br>株の道場 成長先取り編

菅首相の退陣決定を受け、東証株価指数が31年ぶりの高値へ急騰。日経平均株価も3万円を超えました。本特集では9月17日発売の『会社四季報』秋号を先取りし、上方修正期待の大きいサプライズ銘柄を抽出。株価上昇を享受する方法を会得しましょう。

東洋経済education×ICT