ちなみに残った専門職社員たちの声を聞くと
「本当は部下のいる課長のままでいたかった。専門職と言われても、どのように専門性を究めていいのか、会社は教えてくれない。だから、意欲が下がった状態になってしまった」
と本音を語ってくれました。どうやら、部下をマネジメントする課長職を減らして、そのポストを奪われた人に対する救済策としての専門職であるというのが実情で、それ以上には目的が明確でなかったようです。
それならば、専門職制度の社員たちの中から、意欲的な人が逃げていくのも仕方ありません。結局、その会社では専門職制度を廃止したそうです。
専門性だけではダメという真実
さて、冒頭に登場した専門性に関する若手社員と上司間のギャップの問題と、専門職制度が機能しないという問題が起きたことの背景には、同じ原因があるように思います。それは専門性だけに目を奪われ、会社でそれを真に生かすために必要なベースのスキル、つまりヒューマンスキルを置き去りにしていたのではないかということです。
ヒューマンスキルは他者との良好な人間関係を構築し、維持するために必要な能力のこと。対人関係能力とも言われ、業種・職種に関係なく、ビジネスパーソンなら誰でも求められる基本的な能力です。さらに単なるコミュニケーションではなく、「目的に向かって」チーム内で相互に作用していくため
などのスキルも指します。こうしたスキルは、専門職の人にも当然必要なものです。さらに言えば、部下でない人々と仕事でかかわり、業務を遂行するためには、より高度なヒューマンスキルが必要とも言えます。たとえば、
このような能力があってはじめて、専門性は仕事で生かされるものです。
資格を取得すること、専門性を高めるための勉強が無意味とは言いません。ただ、ベーススキル(ヒューマンスキル)の重要性を認識して、磨く努力も同時に行っていただきたいもの。それができれば、上司の評価は大いに変わり、専門職制度も機能するに違いありません。
最後に、こう考えると、本当に仕事で活躍するためには、限られた役割だけをこなすという意識の専門職では十分でなく、より広い役割をこなすジェネラリストに近づいていく気がしてなりません。
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