鉄路の痕跡ない街「住民の足」はどうなっているか バスを主軸に公共交通網を再編・陸前高田編

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鉄道時代の駅舎を模したデザインになった現在の陸前高田駅(筆者撮影)
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鉄道時代の大船渡線は鹿折唐桑から山間部に入り、上鹿折、陸前矢作、竹駒と峠越えルートを取っていた。

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だが途中で県境を越えるため流動が少なく、沿線人口も希薄とあって、震災後のBRT化に際しては気仙沼―上鹿折間はミヤコーバスの路線バスをBRT扱いとし、鹿折唐桑―陸前高田間は広田湾に沿った国道45号経由をメインルートに変更。途中、八幡大橋、唐桑大沢、長部、陸前今泉、奇跡の一本松に駅(停留所)を新設した。陸前矢作―陸前高田間は支線の形でBRTに置き換えた。なお現在は、八幡大橋―唐桑大沢間は三陸縦貫自動車道経由に移されている。

鉄道の痕跡ない市中心部

陸前高田市の中心部は、津波でほぼ完全に流出してしまった。そのため被災したエリアは土盛りをしてかさ上げ。区画整理を行って市街地を再建し、山の中腹の土取場の跡は新しい住宅地として整備している。このこともあって、同市内のBRT専用道は陸前矢作―竹駒間と、小友から西に限られる。それ以外の区間ではBRTは一般道を走り、路線バスと大きく変わるところがない姿になった。

陸前高田駅に停車中のBRT快速便(筆者撮影)
陸前高田駅に停車中の仙台行き高速バス(筆者撮影)

ただし陸前高田市ではBRTを市内の基幹交通機関と定め、再建された陸前高田駅(交通ターミナル)にてほかの路線バス、コミュニティバスと接続させる形で、公共交通網を再編成した。広域移動に関してはBRTのほか、池袋―釜石間の夜行高速バス「けせんライナー」(コロナ禍により運休中)、仙台駅―大船渡間の昼行高速バス、一ノ関―大船渡間の長距離バスが担い、いずれも陸前高田駅に停車する。

これらのうち、もっとも海沿いを走って宮城、岩手の県境を越える路線は大船渡線BRTと岩手県交通の一ノ関〜大船渡線だが、岩手県最南端の集落である福伏(ふっぷし)からは、1日1往復だけ中心市街地との間にコミュニティーバス福伏線がある。

震災の被災地沿岸部を公共交通機関で北上する旅の再開は、これに狙い定めた。県境に近い馴染みのホテルに泊まり、2021年12月1日に乗ろうとしたら、この日の午前中は猛烈な暴風雪。写真撮影どころではなくなったので、年を越した1月22日の土曜日に再チャレンジした。

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