鉄路の痕跡ない街「住民の足」はどうなっているか バスを主軸に公共交通網を再編・陸前高田編

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陸前高田市では、特に市営バス、市民バスなどと名乗っていないが、福伏の集落内にあるバス停に現れたのはワゴン車だった。平日は7時20分発、土・日曜、祝日は9時05分発と発車時刻に違いがあり、平日は通学や通院、土休日は買い物の便を図ったダイヤと思われる。運賃は200円均一。

福伏で発車を待つコミュニティーバス(筆者撮影)

コミュニティーバスの例にもれず、福伏線も実に細かく左右にハンドルを切っては、1人も取り漏らさないがごとくに集落を丹念に回ってゆく。国道を疾走するBRTとは異質な乗り物だ。

造成された新しい住宅地も通るが、観光地として整備された奇跡の一本松は通らず、路線の性格がうかがえる。利用客は年配者ばかり3人ほど。いずれもショッピングセンター「アバッセたかた」まで行く客だった。私は、9時35分に着いた、アバッセの向かいにある陸前高田駅で下車。

広田半島を一周する

市役所、県立高田病院、高田高校など、陸前高田市の主要公共施設は山側へ移転しており、陸前高田駅とは少し離れているため、路線バスの系統の多くはこれらの施設を一回りしてから各地へ向かっている。例外の一つが大船渡線BRTの「快速」を名乗る便で、陸前高田駅から海に近い幹線道路を走って、脇ノ沢方面へ直通する。

陸前高田市内では大船渡線BRTは主に一般道を走る(筆者撮影)

しかし、イオンスーパーセンター陸前高田店付近からBRT脇ノ沢駅付近までは、コミュニティーバス広田線のほうがより海に近いルートを取る。福伏線と同じで、丘陵地へ移転した住宅地を丹念に回るのだ。鉄道時代の大船渡線は海岸沿いを走り、脇ノ沢駅も海に近かったが、津波により人がいなくなってしまった事情が察せられる。イオン付近にBRTの駅はない。アバッセたかたと並ぶ地元のショッピングの拠点だが。設置を求める動きはなさそうだ。

12月1日は、昼前には暴風雪もおさまって晴れ間も見えてきたので、陸前高田駅からタクシーでイオンまで行き、広田線に乗り継ぐことにした。行ってみて、なんとなく状況が理解できたのが、バス停の位置から。スーパーの敷地内にあるのは良いが建物の陰、追いやられたような場所にポールが立っており、かなり探した。どこの地方でも同じだが、自家用車で来る買い物客がほとんどで、バスの客はわずかなのだ。

イオンSuC陸前高田バス停からは、11時09分発の広田泊行きに乗れた。これから、広田湾の東側に突き出した広田半島を一周すればいいのだが、コミュニティーバスの運転系統を理解し、地図と首っ引きでスケジュールを立てるのが一苦労だった。市内のタクシー会社2社が持ち回りで受託している福伏線に対し、広田線、広田半島循環線は碁石観光企画が運行を受託しており、マイクロバスが現れた。

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