「自己実現を目指そう!」と言う上司がヤバい理由 多くの人が誤解する「マズローの欲求理論」
ヤマダ部長が率いる部門は、社員満足度調査でつねに社内最高得点。特にヤマダ部長のマネジャーとしての評価は毎回100点で、「優秀マネジャー」として表彰された。しかしその実態は、部門全員を部屋に集め、ヤマダ部長の監視下で調査用紙に記入させ、ヤマダ部長が1枚ずつチェックしていたのである。
この部門の正体は、ヤマダ部長の下で徹底的に管理された組織だった。こんなことがいつまでも続くわけがない。まもなく不正はバレてヤマダ部長は左遷。その部門にはやる気ゼロの指示待ち社員だけが残った。
「いくらなんでも、これってネタでしょ」と思われるかもしれない。しかし少々昔に実際にあった事例だ。もう時効と思われるので紹介した。
特殊な事例に見えるが、この事例にはマネジャーが陥る罠が凝縮されている。ヤマダ部長のようなあからさまな行為はしないけれども、同じような考え方をするマネジャーは多い。人事権を握り、権威主義で部下の行動を管理するのだ。ではなぜマネジャーは、このようにするのか? そのヒントは、マネジャーが抱えるこんな悩みの声から伺える。
「やる気がない部下ばかりで苦労している……」
それは本当に部下が原因なのだろうか?
イベントで別人に変貌したやる気ゼロ社員
私が会社員時代のこと。各部門が出し物で順位を競う交流会イベントを行った。断トツで優勝したのは、意外なことにみんながいつも仕事で「やる気ゼロ人間」と思っていたワダさんがリーダーのチーム。ワダさんは完全に没入した表情ですごいダンスを披露。一緒に踊る同僚を引っ張っていた。オフィスとはまったく別人。このとき、私は思った。
「職場問題の原因はワダさんではなくて、ワダさんが仕事に没頭する環境がないことなのでは?」
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