――リチャードさんのようなスタイルは特殊なものなのでしょうか。
でも例えば(マリア・)シャラポワにしても、USドルで700ドルだけを持ってロシアからアメリカに渡ってきたというシンデレラストーリーは有名ですからね。父親と彼女本人だけがアメリカに渡って、お母さんはビザやお金の関係で、行きたくても行けなかったと。
それから(ノバク・)ジョコビッチにしても、空の上にミサイルが飛んでいる中、地上よりも下の、水のないプールの中でテニスをしていたとか。そういうハングリーさというのは、それぞれ育った国や環境の違いでありますし、大きく言えばほかの選手にもそういうケースはありますが、ウィリアムズ姉妹とリチャードさんの関係性は、ある種特別なところはあるかなと思いますね。
エージェントだけに頼らない芯の強さ
――トッププロを育成するために、コーチやエージェントが一体になっての組織作り、チーム作りが必要になっていることが描かれていました。
今の時代は特に15、16歳からエージェントがついてくる。基本的な部分では特別なことではないですが、私が思ったのは、ただ単に目の前のエージェントに飛びつくのではなく、しっかりと自分たちがありたい姿、目指す姿を崩さなかったということです。そういうエージェントの力だけに揺るがない強さ、芯の強さというものがあるなと思いました。特に今の若い選手たちはどうしても成功を求めてしまいます。
もちろん成功といっても、いろんな意味での成功があって。成績での成功もあれば、ポジション的な成功もある。金銭的な成功もあると思う。でもリチャードさんは、やっぱりその辺をちゃんと総合的に見極めて、しっかり絵が描けていた。それが揺るがない芯の強さということに表れていたのかなと思います。
――さらに映画では、スポンサーの契約金を引き上げるための駆け引きなども描かれており、スポーツビジネスの裏側が垣間見えたのも興味深かったです。
そこもリアルですよね。やっぱりどうしても若ければ若いほど、かかるお金も大きいので。目の前にある、すぐに手に入るものに走りがちですが、リチャードさんの見えている世界はそこじゃなかった。そこをずっと信じていて。揺るがない強さはすごいなと思いますし、子供たちにもそこをしっかり教えるというか、伝えているのがすばらしいなと思いましたね。
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