やっと見えたBEV普及の道!日産主導の連携戦略 カギは電池再生、平時活用、自治体との連携強化

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最後に、フォーアールエナジーのほかに日産が自治体やエネルギー関連企業と進める連携を紹介しよう。

フォーアールエナジーの事業所がある福島県浪江町に代表されるように、日産と地方自治体とエネルギー関連企業は、地域活性化に向けたさまざまな取り組みを実施している。

BEVは家電などに給電するための電源車として活用できるため、災害時の活躍も期待される(筆者撮影)

電気自動車を活用した災害連携協定プロジェクトの「ブルー・スイッチ」は、2022年1月18日時点で全国162件を数える。

例えば、神奈川県小田原市は、「小田原市EVを活用した地域エネルギーマネジメントモデル事業」を始めており、2022年中にはリーフを含む100台のBEVカーシェアを活用した脱炭素型の地域交通モデルの構築を進めている。

小田原市・環境部エネルギー政策推進課の山口一哉氏によると「導入では、平時での活用をどう進めるかがポイントだ」と指摘する。

具体的には、小田原駅でリーフをカーシェアし、近くのキャンプ場でリーフを大きな電源として活用する。冒頭の写真は、実際にキャンプ場でリーフから給電している様子だ。

リーフからの給電で使用するのはパワームーバー、プロジェクター、ケトル、扇風機で、これらはすべて無料で貸し出す。ワーケーションとして、スタートアップ企業などのニーズを掘り起こしたい考えだ。

需要としては、利用者はまだ限定的だが、例えば東京から事業者がチームとして訪れ、自然環境の中で(アイディア出しを行う)ブレーンストーミング会議との相性がいいという話も出てきているという。

有事でスムーズにBEVを活用するためには、平時でも地元住民はもとより、他の地域から訪れた人も含めて多くの人がBEV給電に実際に触れることが、重要なのだと思う。

枠組みを超え、大きな社会変革へ

日産は2021年12月22日、「自治体向け脱炭素化支援パートナーシップの締結」について発表した。日産、住友商事、そして住友三井オートサービスの3社が連携して、2050年カーボンニュートラルに向けて、各社が持つノウハウを活かして、モビリティとエネルギーを切り口とした、総括的な事業化を推進する。

日産、住友商事、住友三井オートサービスによる「自治体向け脱炭素化支援パートナーシップ締結」記者会見の様子(写真:日産自動車)

また、2022年2月7日には、ブルー・スイッチをタイやフィリピンなどASEAN市場でも地方自治体やパートナー企業と連携して実施することも発表している。

BEVシフトを含めたカーボンニュートラルの主役は、人であり社会であるべきだ。そのうえで、企業としては従来の社会貢献の取り組みや再生品事業という枠組みを超えた、大きな社会変革に向けた基盤づくりが重要になってきたといえる。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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