中国「カーボンゼロ」でトヨタHEVが注目される訳 「BEV一辺倒」の戦略修正で日系各社に追い風
トヨタ自動車の中国合弁企業である広汽トヨタは、2022年1月、高級SUV「ヴェンザ(威颯)」を発売した。
この車は、中国の中間所得層・富裕層をターゲットとしており、価格は21.68万~30.38万元(約395万~550万円)だ。6グレードあり、そのうちハイブリッド車(HEV)は3グレードで、ガソリン車との価格差は3万元(約54万円)と縮まっている。
また、ファーストカー需要向けのSUV「フロントランダー(鋒蘭達)」も発売した(価格は12.58万~16.98万元)。こちらのHEVは、2022年内に投入される予定だ。
トヨタは、HEVの低燃費効果と技術の差別化を幅広い消費者層に訴求し、電動化シフトにより競争力が激しい中国のガソリン車市場で、差別化を図ろうとしている。
中国政府が2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量をピークアウトさせ、2060年までに排出量を実質的にゼロにする目標を掲げている中、自動車メーカー各社は軒並み電気自動車(BEV)を中心とする新エネルギー車(NEV)を続々と投入。中国のNEV市場は急速に拡大中だ。
一方、国際公約や環境対策を勘案して、中国政府はBEV一辺倒の電動化戦略を修正し、省エネルギー車も推進する方針を示した。省エネルギー車にはHEVも含まれるため、日本企業が得意とするHEVの販売の追い風となりそうだ。
コロナ前の水準を上回る自動車販売
2021年の中国新車市場は、「ゼロコロナ政策」による景気回復や消費促進政策の効果などにより、4年ぶりのプラス成長となった。新車販売台数は、前年比3.8%増の2627.5万台、すでにコロナ前(2019年)の水準も上回っている。
中国における2021年の日本車の販売台数は、500万台超を達成した。500万台を超えるのは、3年連続だ。グローバルでの車載半導体不足や中国国内の電力消費量の制限など、自動車生産への影響は深刻なものになってきているが、日本車は低燃費や信頼性などの優位性で人気を博しており、中国乗用車市場で高い実績を示した。
近年、日系自動車メーカーは中国で新車投入や中国仕様車の開発などを通して、消費者ニーズにきめ細かく対応するマーケット戦略を打ち出し、着実に製品競争力を高めている。日本車の中国乗用車市場シェアは2020年に24.1%となり、直近10年間でもっとも高い実績を示した。
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