中国「カーボンゼロ」でトヨタHEVが注目される訳 「BEV一辺倒」の戦略修正で日系各社に追い風

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2021年は半導体不足の影響で22.6%までシェアを落としたものの、外資系勢の中で最大となった。市場シェアで先発組のドイツ勢(22.3%)を抑えたのは、2011年以来だ。

中国で日本車は、ドイツ車とのブランドイメージのギャップに長年苦しめられてきたが、ここにきてクルマの機能性や省エネ性能が評価されるようになり、日本車ファンを増やす環境も整ってきた。その市場に風穴を開けたのは日系のHEVだ。

中国政府は、乗用車メーカーにCAFC(企業平均燃費規制)を実施している。これは、罰則付きの燃費低減目標で、自動車業界の省エネ化を促すものだ。ガソリン消費1リットル当たりの平均走行距離(km/L)を毎年引き上げることで、乗用車メーカーに省エネ技術の向上を要求する。

また、燃費性能がCAFCをクリアできる内燃機関車(エンジン車)を「低燃費車」と定義し、それに対するNEV生産義務の算出を優遇するとしている。具体的には2022年に低燃費車生産台数の30%、2023年に20%に対し、NEV生産の義務が課される。

要するに、「多くの低燃費車を生産すれば、BEVの生産台数は少なくてもいい」というもので、低燃費車生産の実績があるメーカーを評価する意図が見て取れるのだ。その中でHEVは、省エネ効果が低燃費車基準に達する可能性が高いとみられ、CAFCをクリアしやすい車種として注目されている。

2年で2倍になったハイブリッド車

中国でのHEVの販売台数(輸入車を含む)は、2021年に74万台となり、2019年の2倍となった。日本企業が得意とするHEVが中国で強い競争力を見せており、独占状況が続いている。

トヨタは現地生産によるコストダウンに取り組んで販売台数増を果たしており、全車が輸入となるレクサスも好調を維持している。2021年のHEV販売台数は、前年比5割増の47.6万台で、中国HEV市場で65%ものシェアを占めた。

トヨタの中国販売台数(194.4万台)全体に占めるHEVの割合は、2020年の17%から2021年の25%へと大きく上昇した。また、ホンダは「SPORT HYBRID i-MMD」を搭載するHEVを強化し、市場シェアの拡大を図っている。2021年のHEV販売台数は、前年比16%増の23.4万台を記録し、シェアは32%だ。

日産自動車は、2025年までに独自の電動化技術「e-Power」を搭載した6モデルを投入すると発表した。

2021年9月に発表された「e-POWERシルフィ」(写真:日産自動車)

プラグインハイブリッド(PHEV)やレンジエクステンダーとも違うe-Powerは、外部充電機能を持たず、ガソリンエンジンで発電と充電を行い、モーター走行を行う技術だ。

中国市場では、セダン販売台数トップの「シルフィ(軒逸)」に搭載し、2021年末に販売開始。NEDC燃費3.9L/100kmという低燃費と、43%もの高い熱効率を誇る省エネ車で、トヨタ「カローラ」やホンダ「アコード」の競合相手になりそうだ。

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