中国「カーボンゼロ」でトヨタHEVが注目される訳 「BEV一辺倒」の戦略修正で日系各社に追い風
一方で現在、中国の乗用車市場におけるHEVの割合は3%にすぎず、構造が複雑でコストも高い基幹部品の開発は、中国地場メーカーの参入障壁となっている。そんな中、トヨタはHEVの特許を無償開放し、中国でHEVシステムの販売の強化を図ろうとしている。
トヨタ傘下のBluE NexusからHEV基幹システムの供給を受けた広州汽車(GAC)は、自社エンジン(熱効率40.23%)とトヨタのシステムを組み合わせた、中大型SUVタイプのHEVを投入する予定だ。
既存モデルの「GS8(燃費8.1L/100km)」に比べ、32%の燃費改善を実現するという。中大型SUVは、もともと利益率が高く、ハイブリッド化によるコスト増加分を車両価格に転嫁しやすいとみられる。
また、パワートレイン多様化の潮流を見据えて、昨年から地場メーカーもHEVなど省エネ車の開発に力を入れ始めた。
長城汽車(グレートウォール)は2020年末、HEVやPHEV向けの「Lemon(檸檬)ハイブリッドDHT」を発表。DセグメントのSUVで、NEDC燃費は4.6L/100kmと、既存モデルより35%~50%もの低燃費化を実現した。
同社は、2021年6月末に主力SUVモデル「ハーバルH6」のHEV仕様をタイ市場に投入しており、ここでも日系メーカーの牙城を攻めようとしている。
BYDは2021年1月、「DM-iスーパーハイブリッドシステム」を発表し、高い圧縮比のエンジン(熱効率43%)と組み合わせ、PHEV「秦Plus」 に搭載した。燃費は3.8L/100kmだ。DM-iスーパーハイブリッドシステム搭載車の販売は、2021年に27.2万台に達し、同社の新車販売全体の37%を占めている。
長安汽車(チャンアン)は、2021年6月に「藍鯨iDDハイブリッドシステム」を発表。
吉利汽車(ジーリー)は2021年10月末、グローバルパワートレインブランド「雷神動力(Leishen Power)」を発表し、世界トップレベルとなるエンジン熱効率43%、燃費3.8L/100kmを実現するHEVシステム「雷神智擎Hi・X」を披露した。フランス・ルノーと提携し、韓国のルノーサムスンの工場で2024年から新型HEVを生産する予定だという。
BEVだけでは不可能だから
中国では、2020年に5.6L/100kmだった乗用車の平均燃費を、2025年に政府目標である4L/100kmへと高める必要がある。内燃機関車の生産規模およびBEV需要の地域性を考慮すれば、BEV生産のみで燃費規制に対応するのは現実的ではない。
そのため、燃費目標未達成メーカーは当面、エンジン排気量の小型化など、何らかの省エネの工夫をせざるをえない。
中国の地場自動車メーカーは今後、BEVで外資系ブランド車に対抗する一方、エンジン技術の向上により、HEVやPHEVのラインナップを拡充する姿勢を示した。そのような動きの中でHEVの需要喚起が期待されるが、同時に省エネ車市場の競争も激しくなり、日本車には一層のコストダウンが求められることになるだろう。
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