オートサロンと浪江町で見た「EVシフトの壁」 なぜ、日本ではEVシフトに現実感がないのか?
2021年から2022年年頭にかけて、グローバルでEV(電気自動車)バブルといえるほど、自動車メーカーやIT関連メーカー等による急激なEVシフトが表面化している。
しかし、日本で日常生活をしている限り、「そのうち主流になるとは思うが……」といった程度で、世の中が一気にEVにシフトしていくイメージがわかない人も少なくない。その背景をじっくり考えるために、筆者は国内各地での取材を続けている。
直近では、2022年1月14~16日に千葉県の幕張メッセで開催された国内最大級のカスタマイズカーイベント「東京オートサロン2022」に出向いた。スポーツカーやモータースポーツ用マシンなどを含めて、いわゆる“クルマ好き”が数多く集まる場として知られている一大イベントだ。
オートサロンでは自動車メーカーの出展も多く、その中でもっとも目立っていたのは、日産「新型フェアレディZ」日本向けモデルの初公開だ。また、トヨタ「GRMNヤリス」、ホンダ「シビック タイプR」プロトタイプの注目度も高かった。しかし、これらモデルはどれも電動車ではない。
EVでは、STI(スバル・テクニカ・インターナショナル)がドイツ・ニュルブルクリンクでのタイムアタックマシン「STI E-RA コンセプト」を、三菱が2022年度頭に発売を予定している軽自動車「K-EV コンセプト Xスタイル」を世界初公開した。
会場内には、自動車メーカー以外にも中小のカスタマイズ事業者の展示がある。そうしたユーザー感覚に近い立場の人たちと意見交換すると、「EVはメルセデス・ベンツなどヨーロッパの高級ブランドが先行し、日本勢は後追いになる」とか、「例えトヨタがEVモデルを増やしても、日本では当面ハイブリッドが主流でEVが定着するのはかなり先だ」といった声が多く聞かれた。
カスタマイズ事業者が手掛けるような商品性が尖ったパーソナルカー市場の関係者は、EVシフトや自動運転化など、社会におけるクルマの在り方の大きな変化に、どう対応すればいいのか模索している最中だと感じる。現状では“次の一手”をまだ見出せていない、といった雰囲気だ。
震災被災地「浪江町」の本気度
東京オートサロン2022取材の2日前には、福島県浪江町を約2年ぶりに訪問した。
2011年の東日本大震災で被災し、福島第1原子力発電所事故の影響を受けた浪江町には、本格的なEV普及に対する強い思いがあり、それに伴う実行計画が着実に進んでいる。
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