日産「軽EV」将来性が不透明でも発売を急ぐ理由 ベネフィットなくても無視できないESG投資
日産は2021年5月11日、2020年度決算発表をオンラインで実施し、その中で「電動化の推進」として、各市場における電動車の導入についての説明をした。
内田誠CEOは「現在、三菱自動車との共同プロジェクトとしてNMKVで企画開発している『軽EV』は今後(2021年度~)、他社(三菱自動車)に先駆けて日本に投入する」と明言した。
グローバルにおいては、日米欧で「リーフ」、日欧で商用車の「e-NV200」、中国では政府のNEV(新エネルギー車)政策への対応で「シルフィEV」、日産のサブブランドであるヴェヌーシアの「T60EV」「e30」「D60EV」をすでに導入しているが、これらに加えて2021年度から「アリア」を世界戦略EVとして、日米欧中の各市場に導入するという。
また、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッドであるe-POWERは、すでに日本で「ノート」「セレナ」「キックス」(生産国タイ販売も含む)の3車種で展開しているが、2021年度からヨーロッパ向けのSUV「キャッシュカイ」と「エクストレイル」、そして中国向け「シルフィ」を皮切りに、2025年度までに6車種まで拡大する予定だとされた。
e-POWERは、これまで排気量1.2リッターの直列4気筒HR12型エンジンを採用していたが、キャッシュは排気量1.5リッターの可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電機とする新たなe-POWERを搭載する。この新e-POWERは、日本市場向けの新型エクストレイルへも搭載される可能性が高いが、現時点で日産は新型エクストレイル日本仕様の発売時期や技術詳細を明らかにしていない。
こうして日産の電動化戦略を俯瞰すると、「軽EV」は日本固有の軽自動車規定を前提に開発されているため、いわゆるガラパゴスという印象を受ける。また、協業他社の動きを見ても、現時点で「軽EV」の量産化計画を正式に表明しているメーカーは、日産と三菱以外にない。
2019年に発表した「IMk」コンセプト
このような状況で、なぜ日産は「軽EV」の量産を急ぐのだろうか。その理由をさまざまな角度から検証してみたい。
日産が「軽EV」と称しているのは、2019年10月開催の東京モーターショーでコンセプトモデルとして世界初公開された「IMk」が、ベースであると証言する業界関係者は多い。
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