日産「軽EV」将来性が不透明でも発売を急ぐ理由 ベネフィットなくても無視できないESG投資
結局のところ、既存の軽自動車の利便性を覆せないでいるのだ。実際に、超小型モビリティの実証試験の取材を続けてきて、利用者や事業者の多くから「普通の軽で十分事足りる」という感想を数多く聞いた。
軽自動車ならば、どれも高いレベルの冷暖房や乗り心地、ハンドリング、荷室の使い勝手を有しており、多彩なモデルから選択することができるうえ、移動距離も市街地や中山間地域内など限られている場合が多く、消費するガソリン量もさほど多くないから、軽に対する超小型モビリティの明確な優位性が見出せなかった。
急ぐ理由の背景にESG投資あり
実証実験など、超小型モビリティでのさまざまな経験を踏まえてたうえで、あえてトヨタが「C+pod(シーポッド)」を量産したり、日産が「軽EV」事業にGOサインを出したりするのは、やはりESG投資への対応という面が大きいと考えられるだろう。
ESG投資とは『従来の財務情報だけではなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資』のことであり、『機関投資家を中心に気候変動などを念頭に長期的なリスクマネージメントや企業の新たなる収益創出の機会を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されている』(経済産業省HPより一部引用)
また、経済産業省が2020年12月に「グリーン成長戦略」の中でも、グローバルで約3000兆円となるESG投資のうち、その10分の1となる約300兆円を自動車の電動化などによって獲得を目指すとの指針が示されている。
グリーン成長戦略が表に出る前、EVとESG投資との関係については、EV向けの充電インフラ事業を傘下に持つ東京電力がNTT、日立、リコーと共に中核企業となり、大手電力全社やトヨタ、ホンダ、日産、三菱自動車などを含めた「電動車活用推進コンソーシアム」を2020年5月に立ち上げている。
その中では「現実的には軽自動車サイズのEVが商用車として期待が大きい」として、各社参加によるワーキングチームで議論が進んできた。
これが直接的に日産の軽EV量産化決定につながったかどうかは、前出のIMkがプレミアムな乗用軽EVであることを鑑みると、その真偽は定かではない。
だが、三菱が「i-MiEV」の技術からミニキャブ・ミーブを開発したように、IMkをベースに乗用車から商用車まで多モデル化することは十分に考えられるため、日産としてはESG投資による発注分を“本格的な需要拡大に向けた保険”として捉え、“まずは乗用から市場導入”という流れになったとの考えも成り立つ。
いずれにしても、日産が2021年度以降に日本市場への導入を決めた「軽EV」の未来は不透明と言わざるをえないのが現状だ。
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