オートサロンと浪江町で見た「EVシフトの壁」 なぜ、日本ではEVシフトに現実感がないのか?

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浪江町・企画財政課 主幹の菅野友博氏は「震災からの復興、住民の移動の確保、(2019年3月に町が行った)環境省が推奨するゼロカーボンシティ宣言などを踏まえてさまざまな活動を行っているところだ。その中で、少子高齢化とエネルギー分野の2つの課題として、全国の自治体にも参考となるような(事業としての)プラットフォームを日産と一緒に作っていきたい」と、実証実験の継続とその事業化に対する前向きな姿勢を示す。

浪江町内にある福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)の外観(筆者撮影)

日産と地方自治体との連携といえば、2021年12月22日に大きな動きがあった。

日産、住友商事、そして住友三井オートサービスの3社が、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた「自治体向け脱炭素化支援パートナーシップ」を締結したのだ。

「ゼロカーボンシティ宣言」はしていても……

浪江町のように、「2050年ゼロカーボンシティ宣言」をしている自治体は全国で492あり、その人口総数は日本全体の約9割に相当する1億1000万人に及ぶ。

日産としては、浪江町での「モビリティ×エネルギー×まちづくり」が、全国の地方自治体に向けて応用できるという感触を、浪江町で持ち始めている印象がある。

ただし、筆者がこれまで全国各地でEV、自動運転、貨客混載などが関わる新たなモビリティを活用した事例を現場で見てきた限り、浪江町のように「自らの町を将来に向けた持続可能な地に変えていこう」という強い意志を持ち、かつ町の中での議論を継続的に行っている地方自治体は、今のところかなり限定的だ。

浪江町のように積極的な取り組みを行う自治体は少ない(筆者撮影)

特に難しいのが、町全体および周辺地域におけるEVシフトだと感じている。そもそもEVシフトとは、自動車の原動機がガソリンエンジンやディーゼルエンジンから電気モーターに置き換わることを示しているわけではない。

重要なのは、地球環境に対する配慮と、人々の生活の利便性を上手くバランスさせることだ。そのうえで、インフラ(インフラストラクチャー)は充電器のみを指すのではなく、EVを許容するための社会システム全体の仕組みを指す。

地方自治体や住民の意思によって、社会全体がEVシフトを許容するようになっていかない限り、仮に日産がいうモビリティサービス等の公共交通サービスでEVシフトが進んでも、パーソナルカーでの本格的なEVシフトは生まれにくいだろう。これまでのさまざまな取材に加えて今回、浪江町と東京オートサロン2022の現場を巡り、そう感じた。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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