オートサロンと浪江町で見た「EVシフトの壁」 なぜ、日本ではEVシフトに現実感がないのか?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

東日本大震災から約11年の月日が経ち、浪江町は「夢と希望があふれ 住んでいたいまち 住んでみたいまち」を合言葉とした第3次復興計画に沿って、さまざまな施策を実施しているところだ。

2012年からの第1次復興計画では、避難期を乗り切るための具体的な取り組み、2017年からの第2次復興計画では、本格的な復興における具体的な施策を実施。そして、2021年からは、第3次復興計画として「持続可能なまちづくり」に向けた具体的な取り組みを進めている。

この「持続可能なまちづくり」の重要項目として、町全体のエネルギーマネジメントでRE100(再生可能エネルギー100%)を目指すとしている。そうした中、日産は「モビリティ×エネルギー×まちづくり」を掲げて浪江町でさまざまな実証実験を実施中だ。

まず、モビリティとしてワゴン車の「キャラバン」等を使ったオンデマンドタクシーを運行し、またイオン浪江店と連携した約6000品目を届ける事業者と連動した貨客混載を実施している。

日産が浪江町で実証実験しているスマートモビリティ(筆者撮影)

2022年1月7日から2月4日までの実証実験では、町の中心部に高齢者でも使いやすい専用スマホアプリを使って120カ所のバーチャル停留所を設け、同時に買い物配達サービスエリアを浪江町避難指示解除全域まで広げた。

一般的に人口低密度地域では、こうしたモビリティサービスは収益性が悪く事業として成立することが難しい。ただし、浪江町の実状は他の地域と違いがあるという。日産によると、東京や横浜など都市部での実験では、利用者数は1日当たり10回程度だが、浪江町では1日平均36.5回と高いのだ。

日産常務執行役員の土井三浩氏は「我々も驚くほどの成功事例だ」としたうえで、「さまざまなビジネスモデルを融合させることで、(地方の人口低密度地域でも)事業化する道筋が少しずつ見えてきた」と、将来の全国展開に向けた自信を見せる。

浪江町での実証実験について説明する日産常務役員の土井三浩氏(筆者撮影)

今後、日産と浪江町は、モビリティサービス車両のEV化や自動運転化も視野に入れた実証実験を続ける意向だ。

日産「リーフ」をRE100電力で走らせる

エネルギーについては、町役場の「リーフ」5台の充放電をAI(人工知能)によって自律的に制御するシステムを構築した。これは、町の中心部にある「道の駅なみえ」で行われている。

「道の駅なみえ」でAIを活用して充電する5台のリーフ(筆者撮影)

第1段階として、これら5台のリーフ向けに、太陽光発電、風力発電、そして水素を使った発電を複合的に利用して、再生可能エネルギー100%(RE100)を実現する。発電に使う水素は、2020年3月に浪江町内に完成した産学官連携による福島水素エネルギー研究フィールド(通称FH2R)で精製したものだ。

町として、今後は道の駅なみえ全体のRE100を目指す計画だという。

次ページ「日産×住友商事×住友三井オートサービス」の取り組み
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事