やっと見えたBEV普及の道!日産主導の連携戦略 カギは電池再生、平時活用、自治体との連携強化

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――今後はアリアや軽BEVが市場導入されて中古バッテリーの入荷数が増えることが予測される。作業効率をさらに上げる必要があるのでは?

牧野:劣化性能評価にかかる作業時間は、日産の標準方法に比べて大幅に削減できている。急速充電の頻度や、V2H(住宅への充放電)の頻繁度など、クルマの使われ方のデータから電池の残寿命の予測ができるようになってきた。(今後、入荷数が増えることへの対応では)これまでの10年間のアセット(知見やデータ)を使った“次のステップ”への準備を、日産と連携して確実に行っていく。

フォーアールエナジーの牧野英治社長(写真:日産自動車)

――商流における課題は何か?

牧野:中古品のイメージが悪く、(ビジネス上の様々な)制約がある。例えば、これまでは蓄電池に対する各種補助金は、中古品では対象外だった。また、海外向けでは、インドの事業者が小型BEVタクシー(いわゆるオート・リクシャー)用に検討したが、国連環境計画による、有害廃棄物の国境を越えての移動および処分に関する「バーゼル条約」による規制が課題となった。

だが、(近年になり)電池などのリユースの社会的な価値について、各種制度の見直しを含めた議論が盛んになっている。これからも粘り強く、リユースの社会的な価値を(世の中に)説いて、中古電池に対する社会のバリアを徐々にとっていきたい。

――浪江町では、再生可能エネルギー100%(RE100)を目指すさまざまな試みが行われている。地元企業として浪江町に向けたコメントをいただきたい。

牧野:2016年8月25日に、当時の馬場有(ばばたもつ)町長(2018年6月没)が横浜のフォーアールエナジー本社に来られた。その際、2017年春には、町の一部が避難解除となるので、新しい町づくりを進め、BEV導入も拡大したいとの思いを示された。

BEVの電池によって地元に産業を作り、再生可能エネルギーによって災害に強い町を、そして環境にやさしい町作りを進めていきたいという町の意向だった。その気持ちは、我々の企業としてのビジョンと同じであり、馬場前町長の思いが、これまで現実的に進んできたと思う。浪江町のRE100において、今後のステップでも貢献していきたい。

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