やっと見えたBEV普及の道!日産主導の連携戦略 カギは電池再生、平時活用、自治体との連携強化

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ちなみに取材時点でフォーアールエナジーに在庫されていた電池パックは、リーフの初期モデルに搭載されていた24kWhと改良型の30kWhで、最新型に搭載される40kWhと62kWhのタイプはまだ入荷していなかった。

組立・分解を待つ各種電池パック。フォーアールエナジーでは約800の中古電池パックを在庫する(筆者撮影)

次の工程として、フォーアールエナジーが構築した方法によるバッテリーの簡易性能測定を行い、その後、電池パックの外側の掃除をする。降雪地帯で使用された車両のバッテリーには、融雪剤などの影響で端子などが錆びる場合があるが、電池パックの気密性は高く、パック内部に汚れはほとんどないという。もちろん、性能上も問題はない。

その後、恒温室と呼ぶ、一定の温度管理をした専用空間で電池パックの状態を安定させてから、数時間にわたる充電と放電を行い、電池パック全体の劣化の状態を把握する。フォーアールエナジーは、電池とBEVの開発時データと市場で使われてきた車から取得したデータを融合した、劣化シミュレーションを構築したのだという。

劣化性能を把握した上で、A、B、Cの3つのグループに振り分けて、各グループに適した製品として生まれ変わる。

電池パックは1つひとつを丁寧に整備、検査して再製品化する(筆者撮影)

高品質で高性能なAグループはBEVの交換用として、中間性能のBグループは電動フォークリフト向けなどとして、そして回収電池の中で比較的低い性能のCグループは工場受変電設備などのバックアップとして再製品化される。

具体的な商品としては、日産の純正部品、小型BEVやBEVバス向け、日産の製造拠点で使用されている自動搬送機(AGV)、急速充電機の補助用などがある。JR東日本の事例では、停電時に遮断機を稼働させるアシスト機器用として納入実績がある。充電時間が従来の鉛蓄電と比べて1/3に、またコストが最大4割削減でき、そしてメインテナンス性も上がったと、JR東日本から好評価をえているという。

課題は市場における「中古」という概念の転換

浪江事業所の取材後、オンラインでフォーアールエナジーの牧野英治社長に話を聞いた。次ページに、Q&A形式で記載する。

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