中国の鉄鋼業界が排出する二酸化炭素(CO2)の量をピークアウトさせる時期について、中国政府が目標を2025年から2030年に延期したことが明らかになった。
鉄鋼業界の産業政策および環境対策を所管する工業情報化省、国家発展改革委員会、生態環境省は2月7日、連名で新たな「指導意見(ガイドライン)」を通達。2年前の2020年12月末に示されたガイドラインの原案では、鉄鋼業界のCO2排出について「2025年までのピークアウト実現を率先して目指す」と明記していたが、今回の通達ではこの部分が「2030年までにピークアウトを実現する」に修正された。
新たなガイドラインは、鉄鋼業界にとって原案より現実的であるのは言うまでもない。今回の修正の背景について、財新記者の取材に応じた業界関係者の多くは「脱炭素の自己目的化(によって深刻な弊害が生じるの)を避けるためだ」とコメントした。
なお、半年前の2021年7月30日に開かれた中国共産党の中央政治局会議では、CO2排出量のピークアウトおよびカーボンニュートラル実現への取り組みについて「統一された計画と優先順位に従い、全国の足並みを揃えて推進する」ことを確認すると同時に、「脱炭素の自己目的化(による闇雲な推進)を正す」との方針が示されていた。今回の鉄鋼業界の目標延期は、この方針を受けたものだ。
2025年の達成は「性急かつ非現実的」
中国の鉄鋼業界のCO2排出量は年間18億トンに上る。これは国内の総排出量の約15%に相当し、業界別では火力発電に次ぐ第2位の排出源だ。
2020年末のガイドライン原案に関して、鉄鋼業界の実情に詳しい関係者は「あまりに性急かつ非現実的だった」との見方を示した。この関係者によれば、2025年までのピークアウト実現は一部の大手企業には可能かもしれないが、業界全体では相当困難だという。
中国の鉄鋼大手がこれまでに発表したCO2の排出削減計画を見ると、粗鋼生産量が国内2位の河北鋼鉄集団は排出量ピークアウトの目標を2022年に、首位の宝武鋼鉄集団は2023年に、4位の鞍山鋼鉄集団は2025年にそれぞれ置いている。
だが、中国には精錬設備を持つ鉄鋼メーカーが500社以上もある。中小の製鉄所にとって、CO2の排出削減はコストと技術の両面で重荷だ。
一方、大型製鉄所の多くはすでに(生産工程から排出されるCO2を分離・回収する)超低排出設備の導入を進めている。それでも先行きは楽観できない。「現時点ではCO2 の回収コストが非常に高く、採算面のプレッシャーが大きい」と、ある業界関係者は指摘する。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は2月8日
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