コロナ対策「証拠に基づく政策形成」の重要な論点 感染リスクに限らず広範な危機意識共有が不可欠

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感染対策への呼びかけ、ワクチン接種率向上などは、情報提供の内容、手段、タイミングによって効果が大きく異なる。政策効果を大きくするために、情報提供にもEBPMの手法を活用するべきである(現在では、オンライン調査を用いて迅速に調査することも可能になっている。実際に、政策を実施する際に、パイロット的に実施し、その際に効果検証を可能にするようにしておくことも考えるべきである)。

医療では新薬を認可する前に、新薬と偽薬をランダムに処方して、その効果が認められた場合に認可している。重要な政策については、そうしたランダム化比較試験を取り入れていくことを条件にしていくことも考えていくべきである。

具体例を紹介する。私は、感染予防行動を呼びかけるメッセージの効果検証(「How to nudge COVID-19 vaccination while respecting autonomous decision making」SASAKI Shusaku・SAITO Tomoya・OHTAKE Fumio)を2020年4月から7月に、ワクチン接種意欲を引き上げるメッセージの効果検証(「Effective but fragile? Responses to repeated nudge-based messages for preventing the spread of COVID-19 infection」Shusaku Sasaki, Hirofumi Kurokawa, Fumio Ohtake)を2021年1月から3月にかけて行った。

その結果は、「あなたの感染対策で、身近な人の命を守れます」、「あなたのワクチン接種が周囲の人の接種を後押しします」といった感染対策の利他的側面を強調したものが有効だった。

行動経済学や行動科学の知見活用も必要

ただし、メッセージの効果には、人によって違いがある。ワクチン接種を早めにする人と最後まで躊躇する人には異なるメッセージが必要になる。そうしたことを明らかにしながら効果的な情報提供をしていく体制をつくることが必要である。これはコロナ対策に限らない。特に、社会的弱者には、情報が届かず、アウトリーチも難しい。人々の行動変容が重要な分野には健康、環境、防災、教育などさあざまな国の重要政策がある。行動経済学や行動科学の知見を生かして、効果的な政策を行うことが重要である。

政策の見直しの必要性

新型コロナ対策では、エビデンスが不十分なまま、さまざまな政策が行われ、多額の予算が投じられている。これは危機的対応としては、合理的な政策である。しかし、これらの対策の効果が十分にあったのか、副作用がなかったのか、という視点で見直して、必ずしも効果がなかったものは予算を支出しなくてもよいという形に柔軟に変更できる仕組みにしておくべきである(1年先でも予見しがたい状況に対応しないといけないコロナ対策は、従来の予算編成の考え方では対応できない。予備費は行政府に白紙委任で望ましくないので、事前に最良の予測で予算計上をするにしても、情勢の変化で適切でなくなった予算は執行停止、組み替えを図るなど柔軟に対応するべきである<「予算編成見直し臨機応変に」日本経済新聞「経済教室」 岩本康志 2020年8月13日>)。

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