証拠に基づく政策形成の観点から検討すべき
令和4年度予算には、新型コロナ対策予算として5兆円の予備費が計上されている。予備費としての計上は、予期せぬ状況変化に備えるという点ではメリットがあるが、行政府に巨額予算を白紙委任している点は注意すべきことである。これについては効果的な支出に努めることと、事後的な検証が必要である。
中でも、新型コロナ対策はEBPM(証拠に基づく政策形成)の観点から検討すべき論点が多い。ここでは、私が新型コロナ対策分科会・基本的対処方針分科会の構成員として議論してきた経験をもとに、新型コロナ感染症対策とEBPMの観点から意見を述べる。具体的には、政策目標を達成するための効率性、複数の政策目標がある場合のEBPM、リアルタイムのEBPM、情報提供の重要性とその効果検証、政策の見直しの必要性について議論する。
感染症対策として、具体的な政策にどのような効果があるのかを、可能なら事前に分析し、事前に分析できないものは事後的に分析して、より効果的な対策に変更すべきである。その際、具体的な因果関係が明確な政策と、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のように効果が不明確であるが状況変化に応じて行うべき政策を分けて考える必要がある。後者については事後的に効果検証を行うことが不可欠である。
政策には複数の目標があることが多い。例えば、新型コロナ感染症対策は、感染抑制と社会経済活動の両立という政策目標になっているが、両者にトレードオフの関係がある場合には、つぎの点を検討すべきである。
(1) 事前に優先順位が決められているのか
政策目標に最初から明確な優先順位がある場合には、感染対策と社会経済活動との間にトレードオフが存在しても、感染対策を重視するという政策は合理的である。トレードオフを無視して、感染を抑えることに最も有効な対策を検討すればよい。例えば、感染による健康リスクが甚大である場合や感染対策の期間が短い場合には、感染対策を優先するという考え方に合理性がある。
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