「それは謙遜ですよ(笑)。僕たちは庄子に戻ってきてほしかったし、庄子だからこそ歓迎したんです。在籍時も、すごく信頼されていたので」
前述の通り、庄子さんは退社時にしっかり引き継ぐ工夫をしたり、繁忙期を避けるなどの配慮をしていた。信頼関係を築いたまま退職をする、立つ鳥跡を濁さずとはこういったことではないだろうか。
「年収より」重視した2つのこととは?
さて、本記事はある意味、ここからが本題である。
前述した通り、IT業界で豊富な経験を持ち、なおかつ同僚に愛される人柄の庄子さんは、転職市場では引く手あまたと推測できる。
実際、「弥生に戻らずに、他の会社に入社する可能性はあったと思います」とのことだが、最終的に選んだのは弥生。また、複数社を経験しているという意味では他の企業に出戻りする選択もあり得たはずだが、「出戻りという意味では、弥生以外は考えられませんでした」と庄子さんは振り返る。
その理由は大きく分けて、「ビジネスで成果を出すために、包括的に取り組める環境が欲しい」「社員の仲の良さ」の2つだった。
「会社の規模が大きくなりすぎると、役割が細分化されすぎてしまって、どうしても縦割りになってしまいますよね。結果、自分が触れる範囲が限られてしまう。より大きな視点で仕事を進めていきたい自分には、裁量の範囲が大きい弥生のほうがよかったんです。
また、10年単位くらいの視点で、どんな人と関われるかな、という視点で考えた時に、『社員同士の仲の良さ』は大事と考えたのもありました。もちろん、給与だけで考えると弥生よりもいい会社はたくさんありますが、40歳にもなると、『キャリア設計において、そういう視点も大事だな』と考えるようになっていたんです」
さて、ここで筆者にある疑問が浮かんだ。「社員の仲が良いとは、具体的にどういうことだろう?」という疑問だ。世の中には社員同士の仲の良さを謳う会社も多い。だからこそ、庄子さんの口から出る仲の良さという言葉は興味深いが……。
「仲の良さっていろいろありますよね。弥生の場合は休日に一緒に遊ぶとか、そういうのではなくて、『業務のなかで自然と信頼関係を構築していること』の延長線上にある仲の良さなんです。
理由はおそらく、コミュニケーションの軸や、仕事中の会話の主語が”お客様”だということ。どうしたら”お客様”の困りごとを解決できるか、満足いただけるか……そういった会話をよくしているので、部署を横断して、協力し合う空気が形成されていると感じます。もちろん、『どうすれば売り上げが達成できるか』という話もあるけれど、向かう方向が同じなので、部署間で競ったり、責任を押し付け合うことがないので、ギスギスしないんだと思います」
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