──ワクチンの長期的な影響のリスクに不安を感じている人が多い気がしますが、これはどう考えたらいいでしょうか?
ワクチンは、持病などの飲み薬と違って、毎日のように体内に入れるわけではありません。多くの飲み薬は、ある程度の量を摂って血中濃度を維持することで効果を発揮するもの。それに対してワクチンは、わずかな量を接種して免疫系に反応を起こさせることで、体に抗体を作らせるもの。
mRNAワクチンなら、その成分自体は反応を起こした後にすぐに分解されてしまいます。ですから、成分自体による長期的な影響の心配はほとんどないと言っていいでしょう。それに目の前の新型コロナウイルスの感染リスクのほうが圧倒的に大きいので、多少のリスクはあっても接種したほうがいいという状況でもあります。
「免疫力を高める食品」の嘘
──「ワクチンは怖い、でも新型コロナウイルスも怖い」……そういった心の隙間に「免疫力を高める」みたいな商品がつけ込んでくるのでしょうか。でも、免疫をアップする効果を持つ食品なんてありませんよね?
大抵の医者や研究者たちは「とにかく人を助けたい」「新しく効くものがあれば使いたい」、つねに貪欲なほどそう思っています。感染の危険にさらされながら新型コロナウイルスの治療に尽力している医師が無数にいることからも、よくわかるでしょう。
ですから、本当に感染症予防につながるほど「免疫力を高める」食品などがあれば、すぐに医薬品になりますし、ガイドラインにも載ります。これは間違いありません。けれども「免疫力を高める」みたいな商品は、残念ながら不十分な研究をもとに「免疫アップ」をうたっているだけです。一部のメーカーや研究者の倫理観が問われていると思います。
──研究といえば、本の中にはまだ査読を受けていない、つまり本当に正しいかどうかわからない論文「プレプリント」が報道されてしまうことで不正確な情報が広まるという話がありました。なぜ不確定な論文が報道されるようになってしまったんでしょうか?
一部の研究者や研究機関やメーカーが資金集めや宣伝のために、そういう情報をプレスリリースで流すようになっているからだろうと思います。それをリテラシーのない報道機関が「話題性」だけを考えて速報として広めてしまうというわけでしょう。まったく意味のない研究でも、です。
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