「2歳以上の子どものマスク着用が重要」――。
全国知事会が、2歳以上の園児へのマスク着用を国として勧めるよう求めた発言が物議を醸した。世間からは「2歳児がマスクを正しく着用できるはずもない」などと批判の声が続々聞こえてきた。
後藤厚労相は、当初、前向きに対応する意向を示したが、反対意見が相次いだうえ、その後の政府の有識者会議でも、医療専門家から反対意見が続出。政府分科会の提言からは「2歳以上」という文言が削除された。結局、厚生労働省は「可能な範囲で、一時的に、マスク着用を推奨する」という方針を打ち出した。
しかしながら実際には、2歳や3歳の幼い子どもにマスク着用を求める保育園や幼稚園、習い事も多い。大人は「感染予防のため」と十分理解していても、マスクを外したがる子どもが多いのが現実だ。毎日、子どもをなだめながら、何とか着用させている保護者もいるのではないだろうか。また、SNSでは子どものマスク着用にまつわる、真偽の分からない医療情報も見かける。こういった情報に多くの保育者が不安を感じている。
子どもたちのマスク着用のリスクやマスクとの正しい付き合い方、また、着用が難しい乳幼児をウイルスから守るためにできることや、世間に溢れる医療情報との付き合い方などについて、小児医療と生涯発達心理学の専門家に聞いた。
小児科医・新生児科医の今西医師に聞いた
冒頭の全国知事会の報道を受け、「こういった報道に触れたとき、まず見ていただきたいのは、日本小児科学会や公的機関が出している情報です」と話すのは、小児科医・新生児科医の今西洋介医師だ。今西医師は、産科医療を描いた漫画・ドラマ「コウノドリ」の医療監修を務めた。
日本小児科学会の声明には、「乳幼児のマスク着用には危険があります。特に2歳未満の子どもでは、気をつけましょう」とある。学会が指す『乳幼児』とは、6歳以下の未就学児のことだ。
2歳未満でリスクが高まる理由については、まだ自分でマスクを外せず、息苦しさを訴えられない子どもがいるためだ。
「夏は熱中症のリスクがある。一方、冬は胃腸炎が流行る。マスクを着けたまま嘔吐すると、窒息の可能性がある。また、マスクを着けていると、顔色や表情、体調の変化に気付きにくいため危険です」(今西医師)
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