今西医師は一連の騒動についてこう指摘する。「今回の要望で問題だったのは、個人間で発達に大きな差がある2歳児において、対応を一律に区切ったことだと考えます」。
「2歳児でも体調不良や息苦しさを自分で訴えたり、息苦しければマスクを外せる子どももいるが、子どもの発達はそれぞれ違う。知事会や国があのように声明を出してしまうと現場は戸惑ってしまう」(今西医師)
2歳頃は成長が著しい一方、個人差もかなり大きい年齢だ。例えばよくしゃべる子どももいれば、言葉を覚えている最中の子もいる。一律で「2歳以上」と括ってしまうことに問題があった。
今西医師は、「もちろん、家族でマスクを着けましょうと決めているのであれば僕らも否定しない。普段から家庭でも、マスクを顔にフィットさせる大切さや、鼻水などで汚れたら新しいものに替えるといったことを、子どもに伝えることが大事だ」と言う。
アメリカでは2歳以上の子どもにもマスク着用を推奨
海外の現状はどうなっているのだろうか。AAP(米国小児科学会)は、「2歳以上の子どもならマスクを安全に着用できる」としており、CDC(米国疾病対策予防センター)も、「2歳以上の子どもが人と接するような外出をする際には、マスク使用を勧める」としている。
「例えば、アメリカではAAPやCDCの声明を受けて、マスクを着けている2歳以上の子どもも多い。ただ、アメリカは社会全体でマスクを着ける雰囲気があり、マスクの必要性や正しい着け方を子どもたちに指導し、体調変化に細やかに対応できる。
保育士不足が叫ばれる日本では、保育士に対して今以上に負荷をかけられない。保育現場のマンパワーが足りない状況で、細やかなケアが必要とされる2歳以上の子どもについて、マスク必須にするのは困難です」(今西医師)
今回、首都圏で働く保育士数人にも、園児にマスクを着けさせる際の苦労について話を聞いた。5、6歳児でも、正しくマスクを着けられる子がいれば、遊びに夢中になるとマスクを外してしまう子も多いという。
保育現場では、マスクを着けるようこまめに声かけをしながら、1人ひとりの顔色の変化を観察し、手洗いやうがいに関する絵本を読む際には、マスクの必要性や着け方についても指導するという。
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