2歳児マスク論争「対応を一律に区切った」大問題 専門家に聞いた子どもの着用上手な付き合い方

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しかし、2歳でもマスクを着けなければならないシチュエーションは多い。そんなとき、周りの大人はどんなことに注意してあげればよいのだろうか。

「表情の変化を見てあげることが重要です。また、昼寝など、乳幼児が眠りにつく前はマスクを外してあげてください。周りに人がいない外遊びのときは、マスクを着けなくてもよいです」(今西医師)

そして、マスクを着けられない子どもを感染から守るには、「周りの大人のマスク着用と、ワクチン接種が大切だ」と言う。 

また、子どものマスク着用を巡っては、SNSなどで「マスクで子どもの肺が強くなる」などといった臆測や、真偽の分からない情報が流れている。最後に、世の中に溢れる医療情報との向き合い方についてもアドバイスを頂いた。

「まず、厚生労働省や日本小児科学会などの学会、CDC、AAPといった公的機関の提言を見てもらうことが大切です。でも、学会の文章って難しいですよね。学会や公的機関の提言を分かりやすく噛み砕いて発信している人がいるので、そういった人のSNSなどをフォローして、定期的にチェックするとよいでしょう。ただ、情報源を1つにせず、いろいろな人の意見をチェックすることが重要です」(今西医師)

生涯発達心理学の専門家の意見

生涯発達心理学の専門家である日本女子大学の麦谷綾子准教授にも、マスク着用による乳幼児の発達への影響について伺った。

日本女子大学 麦谷綾子准教授(写真:麦谷准教授)

「マスクによる子どもの発達への影響を心配する人もいますが、家でマスクを着けずに子どもとコミュニケーションを取っていれば、過剰に心配する必要はないと思います」(麦谷准教授)

喜び、悲しみ、怒り、といった感情は、口元だけでなく目の見開き方や眉の角度といった顔全体の動きや、声のトーン、前後の話の文脈などを総合して受け取る。また、子どもも大人も口の動きの情報を補助的に使ってことばを聞き取っているが、口への依存度はこどものほうが弱いという研究結果もあるという。

麦谷准教授は、「マスクで口元が隠れても、子どもはそれなりに他の情報で知覚を補っているだろう」と話す。

一方で、「2歳でマスクが着けられる子も、着けられない子もいます。発達の程度も、得意・不得意も、マスクによる影響も子どもによって違う。さまざまな子どもがいるなかで、「子ども」と一括りにして考えてはいけない」(麦谷准教授)と付け加えた。

麦谷准教授は、「マスクを着けずにコミュニケーションを取る時間があれば、一般的には過剰に不安になる必要はない」としたが、仕事や家事に追われ、日頃子どもとゆっくりと過ごせる時間がないという家庭もあるのではないだろうか。その点について麦谷准教授は、「子どもとのコミュニケーションは、時間の長さよりも質が大事だ」と話す。

「子どもと一緒に食事を取りながら話を聞くとか、10分でもいいから一緒におもちゃで遊ぶなど、少しでも顔を合わせたコミュニケーションを取ることを意識してみてください」(麦谷准教授)

ただ、「こうしなければいけない」と、親がストレスやプレッシャーを感じることも、親子にとってよくない。

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