藤井アナが「うす味」の言葉選びをする2つの理由 日常生活や会社で応用できる「心をつかむ」極意

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大学時代に家庭教師をしていた私は、生徒の学力が伸びるのがとてもうれしかったのを覚えています。それは、点数を取ってくれた喜びよりも、学問の仕組みを理解してくれたこと、それを生徒と共有できたことへの喜びでした。生まれた場所も年齢も性別も、まったく違う他人と同じイメージを共有できたときには、喜びが生まれます。

会社で後輩にアドバイスするときでも同じです。まったく別の人生を歩んできた後輩がニュースの伝わる仕組みを理解し、それを身につけてくれたときはうれしいものです。 他人と同じものを共有できるというのは、なんとも幸せなことなのです。

伝わる喜びとは「共有できる喜び」

共有の喜びは、言語も超えます。

サッカーが好きだった私は、海外で行われる試合をよく見にいっていましたが、ある試合で強烈なロングシュートが決まりました。鳥肌が立つような感動を覚えて、立ち上がった瞬間、隣にいたどこの国の人かわからないおじさんと目が合いました。

私は勢いで「すげえな!」と日本語で話しかけたのですが、向こうも何語かわからない言葉でこちらに話しかけていました。お互いにまったく言葉の意味がわからなかったのですが、2人で大笑いしてがっちり握手して、あのシュートの感動を共有しました。伝わる喜びとは「共有できる喜び」なのだと思います。

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一方皆さんは、自分の思いが相手に伝わらないいら立ちを感じたことがあるでしょうか。それは自分の考えに「賛同してくれない」ことへのいら立ちかもしれません。

「共有すること」と「同じ意見になること」は別です。

例えば自分の発信したコメントに、誰かが「いいね」を押してくれたとしても、必ずしも同意見で、あなたに賛同したという意味ではありません。そういう意見もあるねという意味の「いいね」の可能性もあるのです。気持ちを共有できたとしても、その先の「同意」にまで至るものではないということを、忘れたくはありません。

特に、仕事のできる20代、30代の皆さん、そして、よかれと思ってアドバイスしがちな40代、50代の皆さんは気をつけたほうがよさそうです。

相手に同意を求めすぎないことも、伝わる仕組みの一つです。

藤井 貴彦 日本テレビアナウンサー

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ふじい たかひこ / Takahiko Fujii

1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。同年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務める。

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