藤井アナが「うす味」の言葉選びをする2つの理由 日常生活や会社で応用できる「心をつかむ」極意
ただ調整して「伝えた」言葉でも、真意が「伝わった」かどうかは確認が必要です。そこでもう一度、言葉を見つめ直します。ここからは受け取る相手がどんな人かで、方向性が変わりますので全員にフィットする答えはないのですが、例えば、
「作ってもらったのにごめん! 少しだけ、お塩かけていいかな」
といったように、言葉足らずで隠れていた部分をさらに言葉に表してみるのです。 こんな「手間暇」をかければ、相手も気遣いを感じ取ってくれるでしょう。 もちろん相手との関係性から、シンプルに伝えたほうがより効果的な場合もあります。しかしその、「シンプルに伝えたほうがいいと考える」こと自体が、伝える、伝わるために必要な「手間暇」なのです。
初めから相手の立場でものを考えるのは難しいと思います。しかし意識するだけで、伝わり方は大きく変化します。言っているだけではないか、伝えているつもりになっていないか。日々、自問自答を繰り返すことで自然と力はついていくと信じています。伝わる仕組みを知ることが、相手と心を通わせるうえでとても大切です。
「言葉選び」の段階で意識すること
伝わる仕組みの1つとして大切にしているのは、「うす味を目指す」ということです。「うす味」というのは、その言葉に味の調整をする余地を残している表現のことなのですが、これだけでは伝わらないと思いますので、少しご説明いたします。
うす味を目指す理由は2つあります。
1つ目は、「言葉を必要としている人に伝える」ためです。特に私が担当するニュース番組などは、困っている方たち、助けが必要な方たちへメッセージを届けることが多くなります。そんな皆さんには「安心していただける味付け」がとても大切です。元気な方にとってはうすい味付けでは物足りないと感じられるかもしれませんが、テレビの世界には、パンチの効いた濃い味のコメントができる方が多くいますので、そのお仕事はそんな皆さんにお任せしています。
ただ、単なるうす味でも言葉は届きません。その中に一つ、ふっと思いが伝わる言葉を添えたいのです。それが旨味となります。本当に言葉が必要な方には味付けをうすめにして、そこに旨味のある言葉を添えるようにしています。旨味を生かすためにはうす味のほうがいいのです。
もう1つは、うす味を実現するには「味の確認」が必要だということです。先ほどお伝えした言葉の着せ替えと同じように、狙いどおりの味が出せたかどうか再確認をするのです。私たちの感情は強めに出ることがありますので味の確認はとても大切です。
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