「公園遊び」が得意だった人は課題解決がうまい 齋藤太郎×尾原和啓のクリエイティブ対談1

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齋藤:そもそも電通という会社を選んだのも、自分にセンスがあると思っていなかったからです。テレビ局にも内定していましたが、ドラマで人を感動させるとか、バラエティで人を笑わせるとか、報道でみんなが知りたいことを伝えるとか、センスが必要じゃないですか。どれも興味はあるけど、もし自分にセンスがなければ入社しても不幸だと思ったんです。

その点、僕は学生時代にアメフトをやっていたので、まわりをとりまとめてチームを動かすことなら得意だった。電通の仕事もそれと近いんじゃないかと思ったんです。でも実は電通が何をしてる会社かもわかってなかった。入社前はテレビCMはテレビ局がつくってると思っていたし、新聞広告は新聞社がつくってると思ってましたから。

尾原和啓(おばら かずひろ)/IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、グーグル、楽天の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任(撮影:干川修)

尾原:なるほど。入社したのは、コピーライター全盛期ですか。

齋藤:「ピタゴラスイッチ」や「だんご3兄弟」の佐藤雅彦さんも、まだCMプランナーとしていらっしゃった時代です。でも僕はどうせ自分に才能はないだろうし、もし才能があるなら勝手に見いだされるだろうと思ってました。原宿の竹下通りのスカウトみたいな感じで。

尾原:「ユー、センスいいね。クリエイターになっちゃいなよ」?

齋藤:そう(笑)。でもそういう声はかからなかったから、クリエイティブとは無関係なキャリアを歩んできました。同じ電通でも、メディアの広告枠を売っている人と、広告をつくっている人とでは全然違う。築地市場でマグロの競りをやっている人と、築地市場の建物を設計する人くらい違う。僕は電通の新人時代は、この本で書いた課題解決とは、あまり関係ない部署にいたんです。要するに、条件よく買うとか、条件よく売るということがすなわち課題解決である、というような部署にいた。

課題解決=遊びのルールをつくる

齋藤:そのあと営業の部署に行って、資生堂さんの仕事をすることになり、初めて対クライアントの仕事を経験しました。そのときに化粧品や不動産の広告営業になって、ここで初めてクリエイターといわれる人たちと一緒に仕事をするようになった。そのとき「クリエイターも自分も、同じ人間じゃん」と思ったんです。

クリエイターのなかには、「営業やメディアの人間は発言するな」みたいな人もいたけど、僕が発言したことをけっこう拾ってくれる人もいた。だからアイデアを出したり意見を言ったりするのに部署や肩書は関係なく、意外とイーブンなんだと気づいたわけです。野球でいえば、「この球は外野手しか拾ってはいけません」というわけではなくて、球というのは誰からも等間隔のところにあって、誰が拾いに行ってもいいんだと気づいた。そこからどんどん面白くなって、「この球で、こういうふうにして遊ぼうぜ」というようにアイデアも出るようになった。

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