「公園遊び」が得意だった人は課題解決がうまい 齋藤太郎×尾原和啓のクリエイティブ対談1

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齋藤:本当に優秀な表現のクリエイターは、ビジネスのこともわかってるんですよ。仲畑貴志さんによる、TOTOのウォシュレットのコピーの「おしりだって洗ってほしい。」とか、JR九州の「愛とか、勇気とか、見えないものも乗せている」などのコピーは、ビジネスの領域までちゃんと理解していないと書けない。そこにたどり着くには経験が必要だったりする。僕が新入社員のときに受けた試験は、そこまでは見極められないことが多かったんじゃないかな。試験を審査する人たちもクリエイターだったので、「これは切り口として面白いね」みたいなことで評価していたかもしれません。でも広告というのは、広告主がいないと成立しないので、広告としてなぜこういう表現がいいかを論理的に説明できないといけない。「御社の課題に対しては、こういう解決をしたほうがいいですよ。なぜなら……」という理屈が絶対に必要な競技ではあります。

尾原:それにしても、もともとクリエイターじゃなかった太郎さんが、どうしてでサントリーの「角ハイボール」とか、ソースネクストの「ポケトーク」とか、タクシーアプリの「GO」とかで、ビジネスのクリエイティブができるようになったのかが不思議です。

齋藤:たぶん逆側から入ってきたからだと思います。ビジネスのことしか理解していなかった自分が、途中から表現の世界に入っていったから、ビジネスの課題解決に表現をくっつけることになった。ビジネスの仕組みや、ロジックで人がどう動くかというような構造化はある程度自分のなかでできていたので、そこへどういうふうに表現を掛け算していけばいいかは理解していた。だから、この本で書いたようなことができたのでしょう。

(構成:長山清子)

齋藤 太郎 コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター

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さいとう たろう / Taro Saito

慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える。

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尾原 和啓 ITエバンジェリスト

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おばら かずひろ / Kazuhiro Obara

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』『どこでも誰とでも働ける』『IT ビジネスの原理』などがある。

 

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