「公園遊び」が得意だった人は課題解決がうまい 齋藤太郎×尾原和啓のクリエイティブ対談1
尾原:『非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術』というタイトルを最初に聞いたとき、『ノンデザイナーズ・デザインブック』(マイナビ出版)みたいな「デザイナーじゃない人も、この原理原則を守ればきれいなデザインがつくれますよ」という広告表現の本かと思いました。でも読んでみたら表現のクリエイティブではなく、ビジネスのクリエイティブについて書かれた本だった。ユーザーに響く斬新な表現を生み出すための本ではなく、クライアント企業にすら見えていない、本質的な課題を解決するための本だった。
齋藤:そうなんですよ。
尾原:僕は4年くらい前に太郎さんと会って、それ以来、サントリーの「角ハイボール」とか、ソースネクストの「ポケトーク」など太郎さんの仕事を横で見ていたけど、この本を読んで初めて、太郎さんがしていることがこんなに緻密で、しかもすごく地道な世界なんだと知って驚きました。本にまとめるのも大変だったと思うんですけど、普段からここまで言語化できていたんですか?
齋藤:まったくできてなかったです(笑)。やっぱり本を書くとなると、思考とか言葉の在庫をかき集めなければいけなかったから、そこが大変でした。
電通のクリエイティブ職と「非クリ」職
齋藤:僕は電通にいたけれど、20年前は営業とかメディアの仕事をする人間でした。電通では広告をつくるクリエイティブの仕事と、それ以外の仕事がはっきり分かれているんですよ。クリエイティブの局は人気の部署なので、そこに行くには新入社員が全員受ける適性検査に合格しないといけない。だからクリエイティブって、宮崎駿とか小津安二郎とか黒澤明みたいな、特殊な人だけがやれることで、自分には関係ないと思ってました。
尾原:そうですね。クリエイティブのテストというと、サイエンスというよりもアート寄りの先天的なセンスを試されて、「ああ、自分はだめだ」と思ってしまいがちですよね。