「銭湯好きじゃない男」が継いだ銭湯の意外な展開 松本「菊の湯」から事業継承に悩む人が学べる事

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宮坂さんは菊地さんのインスタグラムやフェイスブックなどSNSの発信をフォロー。栞日INN開業時のクラウドファンディングを支援してきており、この人ならきっといいアイデアを出してくれると思って相談したのだ。

それが一転、銭湯継承ということになり、そこからは急展開である。

まずは常連さんや、地域の人たちに報告をしようと町内の回覧板で報告したほか、銭湯内への掲示を出した。8月にはSNSでも発表し、番台をお願いする人を募集。9月からは改修費用を賄うためクラウドファンディングもスタートした。常連さんがいる場でもあり、改装のための休業は短期に、費用を抑えてやる必要があり、わずか2週間で行われることになった。

幸い、クラウドファンディングでは1カ月ほどで500万円余が集まり、新生菊の湯は2020年10月15日に無事リニューアルオープンを迎える。

常連さんに加え、若い世代が来るように

それから1年余り。菊地さんはリノベーションによって雰囲気が変わり、昔からの常連さんが離れて行ってしまうのではないかと危惧したそうだが、ほとんどの常連さんは相変わらず通ってきている。そこに新たに20代、30代の若い利用客が加わり、V字回復とまではいかないものの、利用者数は緩やかな右肩上がりが続いている。

改装後のロビーと番台。番台を挟んで男湯、女湯の入り口を配するようにした。ロビーではオリジナルグッズや地元のアイスクリームなども売られている(筆者撮影)

「10年後、20年後を考えると利用客を代替わりさせていかなければならないと子育て世代を呼びこみたいと思っています。楽観的かもしれませんが、子どもの頃の銭湯体験が銭湯を利用する大人を育てるのではないかと考えています」。

また、銭湯という、家族に継承されることが多く、存続しにくい業種が他人の、経験のない、関心の薄かった人に継承され、成功しているということを広く伝えたいとも考えている。

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