豊かな感性を養う「自ら選ぶ力」を身につけるコツ 「決断力は筋力」少しずつ鍛えることで力がつく

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私は「魚をさばけない」ということがコンプレックスのひとつでした。ですが、コロナ禍の自粛生活を機に練習し、ここ1年でできるようになりました。魚のさばき方を知ると、魚を1匹単位で買うという選択肢が手に入り、世界の見え方が急に変わりました。

魚を1匹で購入できると、身はお造りやフライ、かぶととアラは煮付けなど、いくつもの選択肢のなかから料理を決められるようになります。自然にレパートリーも増えていきました。

長距離走を克服して得た「走る楽しみ」

また、「長距離走がとても苦手」というコンプレックスもありましたが、2012年の京都マラソンでフルマラソンを完走したことで、克服しました。すると、また日常が変わりました。「仕事や家庭で悩んだとき、とにかく無心で走り続けてみる」という選択肢が手に入ったのです。

コンプレックスを克服したことで、選択できる世界が一気に広がりました。以前の私なら、「魚料理はスーパーのお惣菜から選ぶだけ」「悩んだときはお酒や娯楽に頼るだけ」など、狭い選択肢のなかでしか「決定」ができない自分のままでした。

当たり前ですが、決定は選択肢があるからできることです。苦手な選択肢から目を背けて、これまで通りや、他人の言う通りにしていては、それは「決定」とはいえず、決断力は高まりません。

コンプレックスを克服することで、選択肢が増えます。いくつもの選択肢のなかから選ぶ意識を持つことで、判断軸としての感性もより強固になっていくのです。このタイミングで、何かにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

■「社会参加」の意識を持ってみる

「アンガージュマン」という言葉があります。20世紀フランスを代表する哲学者、ジャン=ポール・サルトルが唱えた言葉で、「参加」や「拘束」を意味するフランス語です。日本語では「社会参加」などと訳されますが、要するに「責任をもち、主体的に選択や行動をして生きる」ということです。

「責任をもつ」とは、社会に対して責任をもつという意味です。買い物からSNSでの発言にいたるまで、日常のあらゆる行動において、その選択や決断のすべてが社会に影響を及ぼす(かもしれない)という責任を感じて行動するのです。

ジェンダー問題、貧困、格差、宗教問題……。世の中にはたくさんの社会問題があります。それらの問題を「自分の力の及ばないこと」「誰かが代わりに解決してくれること」と、自分の外側の現実として扱っている人も多いかもしれません。

「自分が声高に叫んでも伝わらないじゃないか」「それよりもまずは自分と身近な人を大切にしたい」という意見も、とてもよく理解できます。ですが、すべての事象はつながっています。すべての結果には原因があり、あなたの些細な行動も、何かの結果の原因のひとつになりえます。

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