社会保障の「不都合な真実」 子育て・医療・年金を経済学で考える 鈴木亘著 ~社会保障の拡大は成長戦略たりえずと主張

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 年金については多くの専門家が論じるとおり、現在の賦課方式を維持したままでは、少子高齢化の進展で世代間不公平が拡大し、早晩、持続不可能になるという。すでに国費の負担割合が増えているが、税収不足で国債発行による将来世代へのツケ回しで財源を確保しているのが実情である。年金純債務を清算事業団のような形で別会計に切り離し、所得比例年金を積立方式に移行すべきと主張する。

興味深いのは医療に関しても同様で、賦課方式を改め、将来の医療費を個人が積み立てる医療貯蓄口座の導入を提案している点である。少子高齢化による医療保険財政の悪化に歯止めをかける手段として、十分検討に値すると評者も考える。

議論となるのは、社会保障が新たな成長分野だと多くの人が期待する中で、社会保障の拡大は成長戦略にはなりえないと断じている点である。社会保障サービスは消費されるだけで、社会資本のように将来の生産性向上には結びつかないという。評者も民主党政権が社会保障の範囲や規模の拡大だけを目指すのなら、財政膨張が止まらないだけでなく、経済成長の源泉となる人々の創意工夫のインセンティブを阻害することになりかねないと懸念する。政権はそのことを十分念頭において、社会制度改革に着手して欲しい。

すずき・わたる
学習院大学経済学部教授。1970年生まれ。上智大学経済学部卒業後、日本銀行入行。98年に退職後、大阪大学大学院博士前期課程修了、後期課程単位取得退学(経済学博士)。大阪大学社会経済研究所、日本経済研究センター、東京学芸大学などを経る。

日本経済新聞出版社 1785円 238ページ

  

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