ミシュランシェフが「本気のおにぎり」作る理由 コロナ禍で「食は人を幸せにする」思いを強く
里山は、人と自然が支え合い、よい関係性を築く象徴
──まずは日本のテロワールを追求してきた成澤シェフの料理スタイル「イノベーティブ里山キュイジーヌ」について教えていただけますか? こちらがおにぎりの原点ともつながってきそうですが。
成澤:もともとは、土や畑のレベルから、安心安全な食材を探して、日本全国の食材の産地を訪ねて回ったことがスタートです。青山に店をオープンして5年後の2008年に、畑で農家さんと話をしていて、ふと目をあげると、雑木林の向こうに山があったのです。「料理人は、畑には行っても、山までは行かないな」と思って、興味をもちました。畑というのは人間が手を入れた自然ですが、その先に何があるのか。そんな興味から、日本各地を訪れるようになりました。
──テロワールは日本語でいうと、「その土地らしさ」や「風土」と訳せると思うのですが、やはり、食材を生み出す原点に目を向けると、土と水、そしてそれを生み出す山に行き着いたと。
成澤:そうです。人が足を滅多に踏み入れることのない高い山々と、人間が普段住む平地。その間にあるのが、里山の存在です。私たちの先祖が長年、たき木や山菜、きのこをとってきて、深い関わりを持ってきた里山は、人と自然が支え合い、よい関係性を築く象徴です。でも、いまたき木を切りに行く人はごく少数。大自然と人間界のはざまにある土地のバランスが崩れてきてしまっていると感じます。