ミシュランシェフが「本気のおにぎり」作る理由 コロナ禍で「食は人を幸せにする」思いを強く

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ミシュランガイドで2つ星、世界のベストレストラン50でも19位に輝くレストラン「NARISAWA」。日本を代表するこの店を率いる成澤由浩シェフが、今情熱を傾けているのは「おにぎり作り」だといいます。その理由とは?(写真:LEON編集部)
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2003年に東京・青山にオープンした「NARISAWA」といえば、ミシュランガイドで2つ星、世界のベストレストラン50でも19位に輝く、正真正銘のガストロノミーのレストラン。この店を率いるのがスペインの美食イベント「マドリッド・フュージョン」で、「世界で最も影響力のあるシェフ」にも選ばれた、日本を代表するシェフのひとりである成澤由浩さんです。
成澤シェフが提唱するのは、日本の里山にある豊かな食文化と先人たちの知恵を、料理で表現する「イノベーティブ里山キュイジーヌ」。まさに日本人の食を追求し続けてきたシェフですが、その彼が今情熱を傾けているのが、「おにぎり作り」だというのです。いったい全体、なぜ? どんなきっかけで、おにぎりを作るようになったのでしょう?

里山は、人と自然が支え合い、よい関係性を築く象徴

──まずは日本のテロワールを追求してきた成澤シェフの料理スタイル「イノベーティブ里山キュイジーヌ」について教えていただけますか? こちらがおにぎりの原点ともつながってきそうですが。

成澤:もともとは、土や畑のレベルから、安心安全な食材を探して、日本全国の食材の産地を訪ねて回ったことがスタートです。青山に店をオープンして5年後の2008年に、畑で農家さんと話をしていて、ふと目をあげると、雑木林の向こうに山があったのです。「料理人は、畑には行っても、山までは行かないな」と思って、興味をもちました。畑というのは人間が手を入れた自然ですが、その先に何があるのか。そんな興味から、日本各地を訪れるようになりました。

本記事はLEON.JPの提供記事です

──テロワールは日本語でいうと、「その土地らしさ」や「風土」と訳せると思うのですが、やはり、食材を生み出す原点に目を向けると、土と水、そしてそれを生み出す山に行き着いたと。

成澤:そうです。人が足を滅多に踏み入れることのない高い山々と、人間が普段住む平地。その間にあるのが、里山の存在です。私たちの先祖が長年、たき木や山菜、きのこをとってきて、深い関わりを持ってきた里山は、人と自然が支え合い、よい関係性を築く象徴です。でも、いまたき木を切りに行く人はごく少数。大自然と人間界のはざまにある土地のバランスが崩れてきてしまっていると感じます。

次ページ里山で得た気づきと、おにぎりを作り始めた理由
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