原油価格堅調でも産油国が増産を渋る明確な理由 今春1バレル=100ドルを試す可能性が高まる

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原油価格が高値で推移していても、産油国はそう簡単に大増産というわけにはいかない。需給がすぐに緩むと考えるのは早計だ(写真:MaxSafaniuk/ PIXTA)

一時は下落した原油価格がここへきて再び高値圏にある。指標であるニューヨーク商業取引所のWTIの直近価格は1バレル=80ドル台が定着しつつある。

直近は中東情勢の緊迫化などが取り沙汰されているが、年初から上昇のきっかけとなったのは、カザフスタンの治安悪化だ。同国では、燃料価格の高騰に抗議する形で始まった反政府運動が激化。一部が暴徒化する中で5日には非常事態宣言が出されるまでに状況が悪化した。

需要はオミクロンの影響が限定的なら一段と増加

これを受けて6日にはアメリカの石油大手シェブロンが主要油田で一時的に減産を行ったことを明らかにするなど、生産にも影響が出るとの懸念が高まる中で原油価格は高騰、昨年11月以来となる1バレル=80ドルの大台を回復した。その後もイラクとトルコを結ぶパイプラインが爆発で停止するなど、先行きの需給見通しが不安定化している。

実は、こうした産油国の供給不安などを受けた相場上昇は、当初の勢いこそ強いものの長続きしないことが多いのも事実だ。今回も情勢が落ち着いてくるにつれて相場はいったん下落に転じる可能性もある。

だが、今回の一連の値動きを見ると、2022年も原油の強気相場が継続することを暗示している可能性が高い。短期的には、世界的な景気回復につれて原油需要がしっかりと増加するいっぽうで、石油生産の伸び悩みが続く中、世界需給がさらに逼迫するとの見方が背景にあるが、今回は少し長期的な視点からそ原油価格の常用の理由を説明していきたいと思う。

需要面の見通しは、短期的にはかなり不透明だ。アメリカでは昨年のクリスマスあたりから、スタッフ不足によって航空便の大規模な欠航が続いた。ただ恐ろしいまでのスピードで拡大した新型コロナのオミクロン株による感染拡大も、ようやくピークを越えた可能性がある。

オミクロン株は従来のものよりも毒性が弱く、重症化になる可能性が低いとされていることが大きい。このままオミクロン株が他の変異株を席捲することで、パンデミックが終焉に向かうとの期待も高まっている。

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