原油が1バレル=100ドル目指しても「割安」な理由 もはやありえないはずの価格高騰が現実的に

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産油国は「今の原油価格は特に問題ない」と考えているフシがある(写真:butenkow/ PIXTA)

原油相場の上昇に、歯止めが掛からなくなっているのではないか。10月7日付のコラム「原油価格、7年ぶり1バレル=100ドル台はあるのか」では、需要の増加や生産回復の遅れによって需給の逼迫が進むなか、「世界の指標であるWTI原油先物価格が1バレル=80ドル台に復帰するのは時間の問題」との見通しを示した。

その後、相場はあっさりと80ドルの節目を上抜け、11月に入って一時は85ドル手前まで迫った。この勢いはどこまで続くのか、はたして1バレル=100ドルの大台を試す展開となるのか。ここまでの上昇の背景や、カギを握る材料の分析を進めながら、今後の値動きを占ってみたい。

「欧州のエネルギー危機」が価格上昇の背景

ここまでの上昇を語るうえで、欧州のエネルギー危機と呼んでも過言ではない天然ガス価格の急騰の影響を、外すわけにはいかない。欧州の天然ガス価格は原油換算で一時300ドル近辺まで急騰、現在も100ドルを大きく上回る水準で推移している。

天然ガスの急騰は、需要の増加に供給が追いつかず需給が逼迫するという、極めて単純な理由によってもたらされたものだ。とりわけ欧州では脱炭素の掛け声とともに、発電分野などで二酸化炭素の排出量の少ない天然ガスへの切り替えを進めてきた。

だが、結局、わかっていながら需要増加に見合うだけの十分な天然ガスを確保できていない。特にドイツでは天然ガスの供給のほとんどをロシアからのパイプラインによる輸入に依存しているが、ロシアと事前に十分な輸入契約を結んでいなかったことが、そもそもの需給の逼迫の要因となっている。

需要の増加予測を見誤ったのか、それとも供給の当てがないままに天然ガスへの切り替えを進めてしまったのかは何とも言えない。いずれにせよ「政治的な判断ミス」が価格高騰につながったことは間違いない。

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