原油が1バレル=100ドル目指しても「割安」な理由 もはやありえないはずの価格高騰が現実的に

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こうした事態を受け、ここへきて皮肉にも割高な天然ガスから原油への需要のシフトが進むようになってきた。天然ガス価格は冒頭に書いた通りで、原油が1バレル=80ドルを超えたといっても、天然ガスに比べればまだまだ割安だ。よってこれからも天然ガスから原油への需要シフトの流れが止まることはなさそうだ。

すでに国際エネルギー機関(IEA)は10月14日に発表した月報で、今回の欧州におけるエネルギー価格高騰の影響を受けた石油需要の増加は、日量50万バレルに上るとの見方を示している。

季節的な暖房需要の増加や、景気回復も「下支え要因」

もちろん、冬の暖房需要の増加も、大きな押し上げ要因だ。今年は南米ペルー沖の大西洋の海水温度が低下、異常気象をもたらすとされラニーニャ現象が強まるとの見通しが出ており、欧米では厳しい冬になるとの懸念が高まっている。このように原油そのものの需要増に加え、天然ガスからの需要シフトも加速する可能性が高く、年末にかけての需要増加は相当なものになると見ておいたほうがよい。

さらに、足元の景気回復が続いていることも、やはり大きな需要の下支え要因になる。すでにIEAも「世界石油需要は2022年にも新型コロナのパンデミック以前の水準を回復する」との見通しを示している。アメリカが11月からワクチンの接種完了者に限り、欧州や中国などからの観光客の入国を認めるなど、規制緩和を進めていることも大きい。欧州や中国との間の「人流」が活発になれば、航空燃料などの需要も一段と増加するのは必定だ。

とはいえ、原油価格は需要と供給のバランスの上で決定されるものであり、永遠に価格上昇が続くわけではない。逆に今の価格上昇を止めるようなシナリオはあるだろうか。需要増が続くのなら、上昇を止めるのはやはり供給面の材料しかない。直近ではサウジアラビアが増産を決断したとの情報も出ているが、やはりOPECプラス(石油輸出国機構+主要産出国で構成)が大幅な増産に踏み切るのかどうかという一点にかかってくる。

OPECプラスは現在「1カ月に日量40万バレル」という、小幅なペースでの増産方針を維持している。これは昨年4月に合意した「日量1000万バレル弱の大幅減産については段階的に解消する」という方針の延長線上にあり、減産前の水準に生産が回復するまで続けられる予定だ。

だが、このペースでは需要増をカバーすることはとてもできず、世界市場も需給逼迫が進んでいるのが現状だ。アメリカはサウジなどに対して、積極増産を要請したが、結局OPECプラスは11月4日の会合でも方針を堅持した。こうした対応を見る限り、OPECプラスは今の価格水準を「割高で問題がある」とは考えておらず、相場をもう一段押し上げるつもりがあるのだろう。

それでも、実はOPECプラスは価格上昇がどこまでも続くことを望んでいるわけでもない。価格上昇が続くと、いずれかの時点でアメリカのシェールオイルの生産が大幅に増加、再び彼らにとって脅威となる恐れがあるからだ。

昨年春の価格急落によって破綻が相次いだ同国のシェールオイル業界は、投資家から採算を重視するように圧力を受けており 、以前のようにコストを無視して生産を増やすことができない。シェールオイルの生産が目立って増加してきていないのには、そういう事情が背景にある。OPECプラスとしてはシェール業者の生産が大幅に増加してくることのないよう、適当なところで価格上昇を抑える必要があるというわけだ。

今のところ、年内にOPECプラスが積極的に動く可能性は低いだろう。ただし年明け以降の早い時点で大幅な増産を決定、需給の緩和に向けて積極的に動き始めることは十分に考えられる。需要増加を上回るような大幅な増産方針が打ち出されるなら、そこでひとまず価格上昇も止まることになる。問題はそれまでに相場が1バレル=90ドル台まで上昇しているのか、それとも100ドルの大台を超えてさらに値を切り上げているのかという点になりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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