パウエルFRB議長はインフレ退治に乗り出すのか 「今年最大のヤマ場」米FOMCが近づいてきた
アメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)の開催(12月14~15日)が間近に迫ってきた。すでに、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は11月30日、上院の銀行住宅都市委員会で証言を行い、これまでインフレに関して使用してきた、「一時的(Transitory)」という表現を外すいいタイミングが来たとの認識を示している。
当局の引き締め転換は時間の問題だった
「来年にはインフレ圧力が後退する」との見方こそ維持したものの、物価上昇の圧力が予想よりも力強いものであることを認めた。そのうえで、10月から開始した資産購入プログラムの規模縮小(テーパリング)に関しても、今回のFOMCで当初の計画よりもペースを速め、数カ月早く終了することを検討する意向を示している。
もともと、この議会証言の本来の目的は、新型コロナ対策として制定された「CARES法」の下で義務付けられたもので、ジャネット・イエレン財務長官とともに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済や市場への影響を議会に報告するためのものだ。だが、パウエル議長のインフレに対する認識と、今後の金融政策変更の可能性に注目が集まる格好となってしまった。
前回のコラム「パウエルFRB議長は今後『豹変』するかもしれない」では、ジョー・バイデン大統領の再指名を受けて、次の4年間の任期を保証されたパウエル議長が、タカ派的な姿勢に態度を一変させる可能性を指摘した。
実際、11月末の議会証言では、いきなりその片鱗を見せた格好となった。もっとも、特に深く先読みした結果でもなんでもなく、予想が当たったからといってとくにそれを自慢したいわけでも何でもない。足元の経済データを見れば、容易に想像がつくものであり、あとは「時間の問題」だったというだけの話だ。
パウエル議長を心変わりさせたデータの1つは、やはり11月10日に発表された10月の消費者物価指数だろう。前年同月比で6.2%と、1990年12月以来31年ぶりの高い伸びを記録したことの意味は半端ではなかった。間もなく12月10日には11月の消費者物価指数が発表になるが、議長もさすがに「インフレは一時的」との見方を撤回せざるをえないと思うに至ったのではないか。
新型コロナのオミクロン変異株に関しては、現段階では情報がなお十分ではないものの、今後もし感染拡大が深刻な状況になっても「需要低迷でインフレ圧力が後退する」との楽観的な見方は禁物だ。パウエル議長も証言でオミクロン変異株の感染が拡大した場合、「サプライチェーンの問題がさらに深刻化しかねない」「人々が感染を恐れて職場復帰に慎重になり、雇用市場が一段と逼迫する可能性あり」との2点で、インフレ圧力をさらに強める恐れがあると、警戒感を露わにしている。
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