パウエルFRB議長はインフレ退治に乗り出すのか 「今年最大のヤマ場」米FOMCが近づいてきた

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いずれにせよ、これまでかたくなにハト派的な姿勢を維持していたパウエル議長が、テーパリングのペースを速める可能性に言及したことの意味は大きい。

これが早期利上げにつながるのかは、まだ何とも言えない。だが、少なくとも利上げの必要性が生じた際、迅速に行動に移せる準備は整えておこうとする意図があることは間違いない。テーパリングを前倒しで終了するということは、状況に応じて来年には少なくとも2回の利上げを行う準備を整えたということなのだろう。パウエル議長は、それだけインフレ圧力がこの先一段と強まった場合には、積極的にこれを抑え込む必要性があると、判断したのだと思われる。

一方で、FRBがインフレ抑制に本腰を入れるようになったということは、それだけ雇用に関しては心配する必要がなくなったとも受け取ることができる。3日に発表された11月の雇用統計は、非農業雇用数が前月から21万人の増加と、予想を大きく下回る弱気の内容となった。だが、この数字を受けてFRBの方針が変わることはなさそうだ。雇用数は年初から月平均で55.5万人という、好調なペースで増加を続けているし、同時に発表された失業率は4.2%と、パンデミック発生前である2020年2月以来の水準まで低下している。

つまり、雇用市場はまだまだ好調さを維持しており、パウエル議長も心置きなくインフレ退治に集中できるのではないか。もちろん、雇用数が前月比でマイナスとなるような事態になれば、また状況も変わってくるかもしれないが、それまではインフレ抑制中心の金融政策が続くことになりそうだ。

FRBの方針転換で、株式市場は大きな下支えを失う

では、こうしたFRBの方針の変化によって、市場はどのような影響を受けるだろうか。株式市場に関しては、早期利上げ観測が一段と高まることに伴う長期金利のさらなる上昇が、改めて重石となる可能性が高そうだ。

もし、今の状況下で感染の拡大が景気に深刻な影響を及ぼした場合でも、これまでのようにFRBの積極的な金融緩和による下支えに期待できなくなるという心理的な影響は、無視できないほど大きくなる。やはり注意が必要だ。

また、ここまでインフレヘッジとしての需要が再認識される中で、比較的堅調に推移してきた金相場にも影響が及ぶことになるかもしれない。FRBがインフレ抑制姿勢を明確に打ち出すことで、市場のインフレ期待が下がってくる可能性があるからだ。

インフレヘッジという大きな下支えがなくなってしまえば、金市場に残されているのは当局の金融引き締め姿勢や長期金利上昇、それらを受けたドル高の進行といった、売り材料ばかりとなる。株価が本格的な調整局面に入った場合に、安全資産としての金に投資資金が流入してくるというシナリオには期待できるかもしれないが、基本的には弱気の見通しに方向転換したほうが良いだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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