アメリカの高校生が学校で習う「資本主義」の本質 「新しい資本主義」を考えるいま再確認したい

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たとえばここに1本の線があり、左端が純粋な指令経済で、右端が純粋な市場経済だとしよう。この線上に近代国家を配置するとしたら、もっとも左のほうに位置するのが北朝鮮とイランだ。真ん中あたりはヨーロッパと南アメリカの国々が多く集まり、そして右のほうにはかつてのイギリス植民地であるアメリカ、オーストラリア、香港が入る。左側に位置する国々の経済は、便宜的に指令経済と呼ばれてきた。そして中央から右側の国々は、社会主義と資本主義に分類される。

資本主義と社会主義は何が違うのか

ちなみに混同されやすいけれども、資本主義と民主主義は違うものであり、注意が必要だ。民主主義だからといって必ずしも資本主義であるとはかぎらず、その逆も同じだ。たとえばインドは世界最大の民主主義国家だが、経済は社会主義だ。香港に本物の民主主義が存在したことは一度もないが、それでも香港の経済は典型的な資本主義だ。

資本主義と社会主義の違いは、政府が生産要素にどの程度まで影響を与え、国が生産要素をどの程度まで所有するかというところにある。

資本主義の国では、市場が決める価格によって、生産物が効率的に配分されている。また、経済活動に使用する資源の私有が認められ、経済的決断のほとんどが個人に委ねられている。とはいえ、政府は何もしないというわけではない。政府は、市場の規制、競争の維持、企業への助成金と課税、私的な契約を履行させる、労働者の収入を非労働者に再分配するなどの行動が許されている。

たとえばアメリカ政府は、労働市場を規制するために法律をつくり、独占企業を解体し、トウモロコシ農家に補助金を出し、環境を汚染する活動に課税し、契約違反を罰し、人々から税金を徴収して社会保障費に充てている。

一方、社会主義経済では、政府の役割がかなり大きくなる。個人の私有財産は認められているが、基幹産業は国が所有しているかもしれない。それに、経済に対する規制は資本主義よりずっと多い。たとえばフランスでは、政府がフランス企業を完全に所有しているわけではないとしても、その大株主であることは決して珍しくない。

またフランスの労働市場は、アメリカの労働市場よりもかなり規制が厳しくなっている。2006年には、学生が大挙して街にくり出して抗議の声を上げた。政府がフランス企業から圧力を受け、雇用から2年以内であれば社員を自由に解雇できるという法律をつくろうとしていたからだ。他方でアメリカには、今でも雇用を保障してくれるような法律は存在しない。

社会主義の国は、多くの財とサービスの価格を管理している。たとえばEUは、医薬品、携帯電話サービス、食料品の価格を管理している。それに加えて、社会民主主義の国は課税にも積極的で、労働者から徴収した税金を非労働者に分配している。

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