「難しすぎる」共通テスト数学が抱える根深い問題 基礎的な試験というより「処理能力を測る試験」
当てずっぽうでも正解になることもあるマークシート式試験で、その方々の平均点が約38点ということは、抜本的な見直しが必要である。受験生の世代はコロナの影響で、満足に勉学をできなかった面もあったことを忘れてはならない。数学1・Aの試験後に多くの受験生から、「難しすぎた」という意見が続出したことも、重く受け止めるべきだろう。
もう1つ指摘したい点は、「主体的・対話的で深い学び」という学習指導要領を反映させたように思われる出題傾向である。花子と太郎ばかりが登場する会話調の問題形式は、時間が限られたマークシート形式の試験で適当かどうか検討すべきという意見もある。たとえば、昨年と比べて平均点が約17点下がって43点となった数学II・Bの試験では、歩行者と自転車の日常ではありえない動き方の問題が設定され(問題4)、花子と太郎の会話調の問題に入っている。もっとも、本質は数列の問題である。
かつて筆者は、有名私立中学校の入試算数問題には、「実際はありえない設問形式が目立つので、それは改めたほうがよい」という趣旨の論文を算数教育の学会誌に書いたことがある。具体的には、「ある容器に偶数匹の生物Aを入れると、それらは一晩で半分の数の生物Bに変身する」とか、「濃度が50%とか70%の食塩水(100℃でも最大28.2%)」とか仮定した問題であるが、算数を身近に感じさせる問題が逆に無関係に思わせてしまうことにも配慮すべきと考え、その論文を執筆した。
今回の数学II・Bの試験に関して言えば、初めからヒント付きの数列の問題として出題してもよかったのではないか、と考える。
「花子」と「太郎」の会話形式で出題する意味
ここで、「花子」と「太郎」がよく登場する算数・数学の問題を考えてみよう。算数では、昔から「花子さんは1本30円の鉛筆5本を買い、太郎君は1冊130円のノート2冊を買いました。代金はいくらでしょうか」というような問題が定番としてある。多くの生徒は、「また花子と太郎か」という感想をもつだろう。それでは、次の算数問題の(A)と(B)を比べてもらいたい。
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