「難しすぎる」共通テスト数学が抱える根深い問題 基礎的な試験というより「処理能力を測る試験」
やや専門的な話題で恐縮だが、n次多項式の関数として表される高校2年までの積分の問題も、かつてのような一般の自然数nではなく現在はn≦2という学習指導要領からの制限がある。それが「積分をすることなく正解を当てる奇妙な“公式”」をいくつか生み出し、これが作問側を意外と悩ましていることもある。
そして2021年からの「大学入学共通テスト」を迎えることになるが、当初はこの試験に記述式を一部導入する案があった。しかしこれには、断固反対したのである(共同通信47NEWSにおける2019年11月15日、11月29日、12月23日の拙文を参照)。その理由を一言で述べると、学力調査のような統計データの収集と違って、膨大すぎる大学入試記述式答案を短時間で正確に採点することには無理があった。
さらに、一部企業が深く関わることへの疑問もあった。とくに、試験が実施される前に「正解」を一部企業に教えたり、一時的にアルバイトの大学生を雇って採点させたりすることなどは、言語道断である。そもそも、大学入試の作問側と受験産業側が一線を画すからこそ公平な入試が成り立つのであって、その境がなくなってしまっては、まるで「泥棒に合鍵を預けるようなこと」を連想されても仕方があるまい。
結局、全問マークシート式の第1回大学入学共通テストが昨年行われ、そして冒頭で述べたような2回目の共通テストに至ったが、今回の試験を踏まえて、いくつかの点を指摘したい。
基礎的な試験というより「処理能力を測る試験」
まず、大学入試センターのホームページに共通テストの仕組み・運営として、以下のように書かれている。
「大学入学共通テストは、大学に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的とするものであり、各大学が、それぞれの判断と創意工夫に基づき適切に用いることにより、大学教育を受けるにふさわしい能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定することに資するものです。」
共通1次試験、大学入試センター試験、そして大学入学共通テストと一貫して目的に書かれていることに、「基礎的な学力試験」ということがある。今回の数学1・Aの試験問題を見る限りにおいて、「基礎的な試験」という表現が適当と思われる国民はわずかではないだろうか。むしろ、「難しい問題の答えを短時間で当てさせる処理能力を測る試験」という表現のほうに軍配が上がると考える。
数学1・Aの試験の受験者数は約35万人であるが、同世代の出生数が年間約115万人ということを踏まえると、同世代全体から見て、数学の問題にチャレンジする意識の高い約3分の1の者が数学1・数学Aの試験を受験したと考えられる。
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